Q. 2020ノーベル医学・生理学賞「C型肝炎ウイルスの発見」は何がすごい?

2020年10月15日

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Q. 2020ノーベル医学・生理学賞「C型肝炎ウイルスの発見」は何がすごい?

 

A. C型肝炎はかつて、患者数がとても多く、肝硬変や肝がんなど重い症状に進行することもある原因不明の病気でした。ノーベル賞が決まった3人の研究者は病気の原因となるウイルスを見つけたうえ、ウイルス遺伝子の配列や複製の仕組みを明らかにしました。これらの発見によってウイルスの検出法や治療法の開発が急速に進み、感染防止やC型肝炎の完治が可能になったという点がすごいところです。

 

C型肝炎ウイルスの検出法がなかった頃は、ウイルスが混入した輸血用血液製剤などから感染することが多くありました。ウイルス検出法が開発されてからは、血液製剤による感染はほとんどなくなりました。

また、抗ウイルス薬も進歩しており、服用すると95%以上のウイルスを排除することが可能とされています。

 

ただ、ウイルスは頻繁に遺伝子の変異を起こし、その遺伝子から作られるたんぱく質も変異しています。薬にはウイルスのたんぱく質をターゲットとしたものがあり、たんぱく質が変異したため薬が効かなくなった耐性ウイルスの出現も危惧されています。大阪大学微生物病研究所の松浦善治教授と岡本徹教授の研究グループは、ウイルスのたんぱく質ではなく、ウイルスが感染した細胞のたんぱく質をターゲットにする薬の開発を試みています。

 

図)C型肝炎ウイルスが細胞に吸着してから放出されるまで(松浦善治教授提供)

 

C型肝炎ウイルスは細胞に侵入した後、細胞のたんぱく質を利用して増殖します。細胞のたんぱく質をウイルスが利用できないようにする薬を作れば、耐性ウイルスが出現しにくくなると期待されます。

→どんなたんぱく質をターゲットとしているの?ほか詳しくはこちら

http://www.biken.osaka-u.ac.jp/achievement/research/2016/9

 

抗ウイルス薬でウイルスをゼロにできても、肝がんになる可能性は依然として高いことが知られています。その謎はまだ解き明かされていません。また、C型肝炎ウイルスの感染に気付かないまま、20年、30年かけて肝硬変や肝がんを発症することもあります。発症せずに感染が続く詳しいメカニズムは不明です。前述の松浦教授のグループは、まだまだ謎が多いC型肝炎ウイルスがどのように感染し、どのように増えるのか、研究を進めています。

詳しくはこちら

http://www.biken.osaka-u.ac.jp/laboratories/detail/4

 

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