デングウイルスに対する安全で効果的なアミノ酸改変ワクチンを開発(MOCIDからiScienceに発表)

デングワクチン(※1)の研究が始まって70年以上が経過しましたが、未だ安全で効果的なデングワクチンは存在しません。唯一の認可デングワクチンであるサノフィ社のDengvaxia®は、デング抗体陰性者の重症化リスクを却って増大させてしまいます。その原因として、感染増強抗体によるウイルス血清型間の交差反応が大きな要因を占めます。

本研究では、中和抗体を産生するが感染増強抗体は産生しない理想的なデングワクチンをマウスモデルで構築することを目的としました。

最初に、感染増強モノクローナル抗体(3H12)のエピトープを決定しました。この抗体の結合から逃避するデング1型ウイルス株はエンベロープ領域がD87N及びL107Fであることを発見しました。次に、エンベロープ領域にD87N及びまたはL107F変異を加えたDNAワクチンをマウスに接種すると、変異ワクチンを接種したマウスは感染増強抗体の産生が抑制されることを見出しました。一方、変異のない親株のエンベロープ領域を有するDNAワクチンを接種したマウスは感染増強抗体を産生しました。これらのアミノ酸改変ワクチンは、他の血清型や4価ワクチンの戦略でも同様の効果が認められました。

本研究のアミノ酸改変ワクチンは、中和抗体は産生するが感染増強抗体を産生しない理想的なデングワクチン開発研究に貢献すると考えられます。

 

本研究成果は2019年3月にiScience誌に掲載されました。

Key Amino Acid Substitution for Infection-Enhancing Activity-Free Designer Dengue Vaccines.

Yamanaka A, Konishi E

 

※1デングワクチン

ネッタイシマカやヒトスジシマカが媒介するデングウイルスが原因でおこるデング熱に対するワクチン。デングウイルスに対する抗ウイルス薬はなく、有効なワクチンの開発が待たれている。日本でも、海外からの帰国者がデング熱を発症する事例が発生している。