フラビウイルス感染細胞の生存にはBCLXLが必須である(松浦研がPLoS Pathogensに発表)

日本脳炎ウイルス、デングウイルス、ジカウイルス等のフラビウイルスは蚊によって媒介され、重篤な疾病を惹起します。また、アポトーシスは傷害を受けた細胞や病原体に感染した細胞を除去することで生体の恒常性維持を担っており、BCL2蛋白質ファミリー(※1)はその中心的な役割を果たしています。

本研究では、フラビウイルス感染におけるBCL2蛋白質の制御機構を検討しました。フラビウイルスに感染した細胞をBCL2蛋白質のBCLXに対する阻害剤で処理すると、アポトーシスを誘導できることを見出しました。この現象は、フラビウイルスに感染すると、BCL2蛋白質のMCL1の発現が低下し、細胞の生存はBCLXに依存していることを示しています。さらに、BCLXの阻害によってアポトーシスを誘導した細胞は免疫細胞によって貪食され、BCLX阻害剤が抗ウイルス活性を示すことをマウスモデルで証明しました。本研究で使用した阻害剤は、すでに臨床で使われており、BCLX阻害剤の抗フラビウイルス薬としての可能性が期待されます。

 

※1)BCL2蛋白質ファミリー

アポトーシスを制御する蛋白質ファミリー。一番最初にアポトーシスを抑制する遺伝子として同定されたBcl-2がに類似した構造を持つ分子群。アポトーシスを抑制するメンバーと、アポトーシスを促進するメンバーに分かれる。BCLXはアポトーシスを抑制するメンバー。

 

本研究成果はPlos Pathogens誌に2018年9月に公開されました。

Infection with flaviviruses requires BCLXL for cell survival

Suzuki T, Okamoto T, Katoh H, Sugiyama Y, Kusakabe S, Tokunaga M, Hirano J, Miyata Y, Fukuhara T, Ikawa M, Satoh T, Yoshio S, Suzuki R, Saijo M, Huang DCS, Kanto T, Akira S, Matsuura Y.