C型肝炎や寄生虫に対する治療薬開発ターゲットを発見(松浦研がPNAS誌に発表)

C型肝炎ウイルス(HCV)は、脂肪肝、肝線維化、肝癌といった慢性肝疾患の主要な原因ウイルスです。これまでに私たちは、HCV粒子を形成するコア蛋白質が、ER膜に局在するシグナルペプチドペプチダーゼ(SPP)というアスパラギン酸プロテアーゼによって切断されることが、粒子形成や病原性発現に重要であることを明らかにしてきました。SPPの酵素活性中心は、アルツハイマー病に関与するガンマセクレターゼ(※1)と相同性が高く、その阻害剤がSPPの活性を阻害することが知られていましたが、その作用機序は不明でした。本研究では、SPPの三次元立体構造を予測し、SPPの活性を阻害する化合物との相互作用を検討し、SPPの223番目と258番目のアミノ酸が阻害剤との相互作用に重要であることを見出しました。さらに、マラリア由来のSPPもHCVのコア蛋白質を切断可能で、SPP阻害剤はマラリアやトキソプラズマといった原虫の増殖を制御できることが明らかになりました。以上の成績から、SPPを標的とした創薬開発は、C型肝炎だけでなく、抗原虫薬としても期待されます。

※1)ガンマセクレターゼ

プレセニリンと呼ばれる膜タンパク質からなるタンパク質複合体で、アルツハイマー病の原因物質とされるアミロイドベータを産生することが知られている。故にガンマセクレターゼ阻害薬はアルツハイマー病の治療薬となり得ることが期待され、研究・開発が進められてきた。今回着目した阻害剤は、一部は治験の第3層試験まで進んだものの、アルツハイマー病の症状改善には効果がないことが判明し、アルツハイマー病治療薬としての開発は終了している。

論文

 

本研究成果は米国科学誌「米科学アカデミー紀要(PNAS)」の電子版に、2017年11月27日に公開されました。

Characterization of SPP inhibitors suppressing propagation of HCV and protozoa

Pubmed website

PNAS website

関連資料

SPP阻害薬がC型肝炎の病態に関与することを明らかにした論文

微研研究成果欄内ページ

TRC8-dependent degradation of hepatitis C virus immature core protein regulates viral propagation and pathogenesis.