Nat. Immunol. 14:454-460 2013/03/17

栄養素の過剰摂取が原因となって発症する生活習慣病は、現代社会における重要な健康問題となっています。近年の研究により、生活習慣病の発症には自然免疫機構を介した炎症の誘導が深く関わることが明らかになってきました。自然免疫機構は、病原性微生物を排除するための感染防御機構としてよく知られていますが、過栄養摂取により生じる代謝物にも反応するために、強い炎症を引き起こして生活習慣病の発症要因になってしまいます。私たちは、様々な自己成分による炎症の誘導に関わる自然免疫機構であるNLRP3インフラマソームの研究を行い、痛風が発症するメカニズムの詳細を明らかにしました。過栄養摂取により蓄積して痛風の発症要因となる尿酸結晶は、マクロファージなどの自然免疫担当細胞を強く刺激することにより、ミトコンドリアの損傷を引き起こします。ミトコンドリアの損傷は、健康・長寿に関わるSIRTファミリーに属する微小管機能の調節酵素SIRT2の活性低下につながります。SIRT2の活性低下は微小管を介したミトコンドリアの空間配置変動を引き起こし、損傷ミトコンドリアを介したNLRP3インフラマソームの活性化が強く促進されます。痛風治療薬であるコルヒチンは、微小管を作用標的としてミトコンドリアの空間配置変動を阻害することにより、NLRP3インフラマソームを介して発症する痛風の炎症症状を緩和すると考えられます。