Nature 495:524-528 2013/03/28

マクロファージは、M1とM2という少なくとも2つのグループから構成されている。M1マクロファージは炎症応答を惹起し、細菌やウイルス感染に対する宿主防御に中心的な役割を担っている。一方で、M2マクロファージは抗炎症応答、寄生虫感染、組織再生、線維化および腫瘍の転移や浸潤に関与していると考えられている。Trib1は、ユビキチンリガーゼであるCOP1と相互作用することによってタンパク質分解に関与する分子であり、ヒトのゲノムワイド関連解析から、TRIB1が脂質代謝に関係する可能性も考えられている。今回我々は、Trib1がM2マクロファージの一種である組織常在型マクロファージ(今回、M2様マクロファージと名付けた)―および好酸球の分化に非常に重要であることを証明した。Trib1が欠損している状態では、骨髄、脾臓、肺および脂肪組織といった様々な抹消組織でM2様マクロファージが著しく減少しており、Trib1欠損骨髄細胞におけるC/EBPαの過剰な発現が、マクロファージ分化の欠陥に関与していることが明らかとなった。非常に興味深い事に、造血細胞においてTrib1を欠損するマウスは通常の食事を与えて飼育しているにも関わらず、脂肪分解が亢進して脂肪細胞自体の大きさが萎縮する事を発見し、更に、Trib1を欠損するマウスにM2様マクロファージを移植するとこの病態が回復したことから、これらの細胞集団の欠損がリポディストロフィーを起こしている原因であることを突き止めた。これらのマウスを高脂肪食を与えて飼育すると、Trib1を欠損するマウスでは炎症性サイトカインの過剰な誘導とともに高トリグリセリド血症やインスリン抵抗性と言った様なメタボリックシンドロームの病態を発症した。以上の事から、Trib1が組織常在型M2様マクロファージの分化を制御することにより、脂肪組織の維持とメタボリックシンドロームの抑制にとって非常に重要であることを証明した。