|
|
 |
2. Toll様受容体による微生物認識
|
|
|
|
|
Toll様受容体は、種々の病原体特有の分子構造の認識に関与する。この分子構造は、個々の病原体に特有というわけではなく、一群の微生物に共通にみとめられる構造である。そして、これらの構造は、宿主である生体内には発現されていない。すなわち、生体には存在しない構造、他から侵入してきた構造を感知するのがToll様受容体である。Toll様受容体のリガンドは、いずれも免疫応答を強く活性化し、アジュバントとして機能する。たとえば、最も代表的で広く研究されているのは、グラム陰性菌に共通して存在するリポ多糖(lipoplysaccharide: LPS)である。LPSは、菌体外膜の主成分であり、TLR4により認識される(図1)。
グラム陽性菌は、LPSを持たないが、やはり、強い免疫賦活作用を持つ。外膜には、ペプチドグリカンの厚い層が存在し、その中には、種々の脂質タンパク、脂質ペプチドが存在し、これらが免疫活性化の主成分となっている。また、マイコプラズマは、このような細菌と異なり、LPSもペプチドグリカンなどから成る外膜も持たない。しかし、やはり、免疫活性化能を有しており、その作用は細胞質膜に存在する種々の脂質タンパク、脂質ペプチドに由来する。これら種々の菌体膜成分はTLR2により認識される(図1)。
また、脂質ばかりでなく、タンパクもToll様受容体のリガンドとして機能する。腸内細菌など運動性細菌が保有する鞭毛の中には、免疫応答誘導作用を有するタンパクとして、フラジェリンが知られている。このフラジェリンの認識にはTLR5が関与している(図1)。
微生物由来分子で、免疫を活性化するのは、脂質、タンパク成分ばかりではない。 1980年代に、BCGの抗腫瘍効果がDNA成分によるものであることが示された。細菌由来のDNAと比較して、哺乳類由来のDNAにおいては、シトシン、グアニンが隣り合って存在する頻度が低く、また、その大部分がメチル化されている。すなわち、非メチル化CpGを含むDNA(CpG DNA)は、細菌特有の分子構造であるということになる。また、20-30塩基からなる小さい合成DNAにおいても、同様の免疫活性化能がみとめられ、抗腫瘍ワクチンとしての効果が期待されている。このCpG DNAの免疫能活性化作用には、TLR9が必須である(図1)。
また、DNAばかりでなく、ウイルス感染の際に産生される二本鎖RNAも微生物由来分子構造として、宿主の免疫機能を活性化する。この二本鎖RNA、および、二本鎖RNAと機能的に類似した物質であるポリイノシンポリシチジン酸(polyinosinic-polycytidylic acid, polyI:C)はTLR3により認識される(図1)。
さらに、このような微生物由来因子ばかりでなく、化学合成物質の中にもToll様受容体により認識されるものがある。イミダゾキノリン誘導体は、種々のサイトカイン産生を誘導し、抗ウイルス作用を発揮することが知られている。この作用には、TLR7が必須である(図1)。現在、TLR7のリガンドは他にも同定されているが、いずれも化学合成物質である。イミダゾキノリン誘導体に似た物質が自然界に、たとえば、ウイルス由来因子として存在するかどうかということは、非常に興味ある課題であるが、現時点ではまだ報告されていない。
これらToll様受容体による微生物認識には、Toll様受容体によるヘテロ2量体形成も重要な役割を果たす。たとえば、TLR2は、TLR6とヘテロ2量体を形成した場合には、マイコプラズマ由来リポペプチドを、TLR1とヘテロ2量体を形成した場合には、細菌由来リポペプチドを認識する(図1)。細菌由来リポペプチドは、アミノ末端のシステインに脂肪酸側鎖が3本あるが、マイコプラズマ由来リポペプチドでは、2本しかなく、TLR2を含む2量体は、この微妙な違いを区別している。すなわち、TLR2は、2量体のパートナーを変換することにより、微妙な構造の識別を可能にしている。
以上のように、Toll様受容体は、多彩な微生物由来分子構造の認識に関与している。
|