コウモリ細胞でウイルス増殖を特異的に制御するウイルス性因子の発見(小林研がPLOS PATHOGENSに発表)

ウイルス免疫分野の納田遼太郎特任研究員(常勤)、小林剛教授らの研究グループは、コウモリを自然宿主とし、ヒトの急性呼吸器疾患に関連するネルソンベイオルソレオウイルス(NBV)のp17タンパク質が自然宿主のコウモリ由来細胞において特異的に機能し、ウイルス複製を制御することを明らかにしました。

 

コウモリはエボラウイルス、ニパウイルス、新型コロナウイルスなど、ヒトに感染することで重篤な症状をもたらすウイルスの自然宿主と考えられています。しかし、コウモリが病原性をほとんど示すことなく、これらのウイルスを保有できる仕組みは不明なところが多く、宿主因子やウイルス性因子がウイルス複製を調節しているのではないかと考えられています。本研究では、NBV p17タンパク質が核に移行し、NBVの自然宿主であるコウモリ細胞特異的に、細胞融合活性を有するNBV FASTタンパク質の機能を調節することで、ウイルス複製を制御していることを明らかにしました。本成果はウイルスとその自然宿主であるコウモリとの共生関係を理解する上で有用な知見であり、自然宿主におけるウイルスの複製や病原性の制御機構の解明に貢献することが期待されます。

 

本研究成果は、米国科学誌「PLOS Pathogens」オンライン版に6月3日(日本時間)に公開されました。

タイトル:“The nonstructural p17 protein of a fusogenic bat-borne reovirus regulates viral replication in virus species- and host-specific manners”

著者名:Ryotaro Nouda, Takahiro Kawagishi, Yuta Kanai, Masayuki Shimojima, Masayuki Saijo, Yoshiharu Matsuura, Takeshi Kobayashi 

  • 図 : コウモリ細胞におけるNBV p17によるFASTを介した複製制御機構モデル