GPIアンカー生合成系とスフィンゴ糖脂質生合成系および小胞体関連分解系のクロストークを発見(木下研がNat. Commun.誌に発表)

グリコシルホスファチジルイノシトール (GPI)アンカーは、多くのヒト細胞表面タンパク質を細胞膜に係留する糖脂質である。GPIアンカーの糖鎖骨格の構造は保存されているが、側鎖によって構造の多様性がもたらされる。GPIの側鎖を合成する酵素のうち、ゴルジ体においてガラクトースを付加するガラクトース転移酵素(GPI-GalT)が不明であった。今回、GPI-GalT遺伝子を同定するスクリーニングを実施し、それが従来GM1ガングリオシド合成酵素として知られているB3GALT4と同じであることを見出した。さらに、スクリーニングで得られた遺伝子の解析から、B3GALT4がGPIアンカーにガラクトースを転移する時には、ラクトシルセラミドを必要とすることがわかった。これらの結果は、ゴルジ体において無関係に働くと考えられてきたガングリオシドなどスフィンゴ糖脂質生合成系とGPIアンカー成熟経路が密接に関連していることを示している。加えて、スクリーニングで得られた他の遺伝子の解析から、小胞体関連分解系によってGPIアンカーの生合成量が制御されていることを示す知見が得られた。すなわち、今回のスクリーニングからGPIアンカー生合成系と他の複数の系のクロストークの存在が明らかになった。なお、本研究は中国、江南大学藤田盛久教授グループとの共同研究で、微生物病研究拠点共同研究課題の成果である。

 

本研究成果は、2020年2月13日にネイチャー姉妹誌「Nature Communications」に掲載されました。

Title: Cross-talks of glycosylphosphatidylinositol biosynthesis with glycosphingolipid biosynthesis and ER-associated degradation

Authors: Yicheng Wang, Yusuke Maeda, Yi-Shi Liu, Yoko Takada, Akinori Ninomiya, Tetsuya Hirata, Morihisa Fujita, Yoshiko Murakami & Taroh Kinoshita

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