食中毒菌・腸炎ビブリオの新たな下痢誘導メカニズムを解明(飯田研がNat Microbiol誌に発表)

腸炎ビブリオは本研究所において発見された、食中毒の代表的な原因細菌です。この菌は本来海に生息していますが、菌が付着した海産魚介類を摂食することでヒトに感染し、下痢などの急性胃腸炎症状を引き起こします。細菌感染分野では腸炎ビブリオが下痢を起こすメカニズムの解明を目指しており、これまでにこの菌が持つⅢ型分泌装置(*1)が下痢を起こすのに重要な役割を果たしていることを明らかにしてきました。

今回、研究チームは新たに腸炎ビブリオが自身の産生する外毒素(*2)である耐熱性溶血毒(TDH)をⅢ型分泌装置により宿主細胞内に注入することで下痢を誘導することを明らかにしました。TDHの存在と腸炎ビブリオの病原性は疫学的に相関関係にあることから、長年にわたり腸炎ビブリオの病原性へのTDHの関与が議論されてきました。これまで細菌の外毒素がⅢ型分泌装置で輸送されることはないと考えられてきましたが、本研究によりTDHが意外な形で下痢の誘導に関わることが明らかになり、腸炎ビブリオの下痢を起こすメカニズムの全容の解明に繋がることが期待されます。

 

*1: Ⅲ型分泌装置

グラム陰性細菌が持つタンパク質分泌装置の一種であり、注射針のような構造をとる。Ⅲ型分泌装置を介して細菌はエフェクターと呼ばれる自身の病原因子を宿主細胞内に直接注入する。

 

*2: 外毒素

細菌が産生する毒素であり、菌体から放出される。宿主細胞膜に外側から結合し、膜上ないしは細胞内に取り込まれて作用する。

 

本研究成果は2019年2月19日にNature Microbiology誌に掲載されました。

Export of a Vibrio parahaemolyticus toxin by the Sec and type III secretion machineries in tandem

Matsuda S, Okada R, Tandhavanant S, Hiyoshi H, Gotoh K, Iida T, Kodama T