C型肝炎ウイルスの肝外組織での増殖機構を解明(松浦研の研究成果がPLoS Pathogensに掲載)

肝臓特異的なマイクロRNA(※)のmiR-122は、C型肝炎ウイルス(HCV)の肝臓特異性を規定し、複製に必須な宿主因子の一つです。しかしながら、HCVの慢性感染と肝外病変との関連が指摘されており、肝臓以外の組織でも低レベルのウイルス複製が検出されていますが、その分子機構は不明のままでした。私たちは、miR-122を欠損させた肝臓細胞でHCVを継代して、miR-122非依存的に増殖できる変異ウイルスを選抜し、その性状を解析しました。その結果、遺伝子型2aのHCVでは、ゲノムRNAの5’側非翻訳領域に存在する2箇所のmiR-122結合領域近傍の28番目のグアニンがアデニン(G28A)に、また、遺伝子型1bはG28Aに相当する29番目の塩基は既にアデニンですが、30番目のシトシンがウラシルに変異していました。さらに、肝外病変発症例を含む遺伝子型2aのHCVに感染した患者の末梢リンパ球由来のHCVの4割に、G28A変異が検出されました。

本研究により、miR-122非依存的に増殖可能な変異ウイルスは、肝臓では出現しにくいものの、miR-122阻害剤の投与や、肝外組織での持続感染によって出現する可能性が示されました。

 

※マイクロRNA
20~25塩基で構成される短いRNAで、mRNAの標的配列に結合しその遺伝子発現をコントロールする因子。肝臓ではその7割がmiR-122であることが知られている。

 

この研究成果はPLos Pathogens誌に掲載されました。

Characterization of miR-122-independent propagation of HCV.

PLoS Pathogens 2017 May 11;13(5):e1006374. doi: 10.1371/journal.ppat.1006374