伊川研の研究成果がNat Commun誌に掲載されました

卵子と精子の細胞融合(*1)は哺乳類の受精において必須のステップであり、卵子の細胞膜上のJUNOタンパク質が精子の細胞膜上のIZUMO1と結合することにより引き起こされます(*2)。本研究では、微生物病研究所・佐藤裕公助教、伊川正人教授らが、東京大学大学院理学系研究科の加藤一希大学院生(研究当時)、西増弘志助教、濡木理教授らとの共同研究を行い、東京大学の研究グループが決定したマウスJUNOタンパク質の結晶構造に基づき、IZUMO1との相互作用に関わる部位を推定しました。CRISPR/Cas9システムを用いて作製したJUNO欠損マウスに由来する卵子(精子と融合できなくなる)を用いた変異体解析を樹立したことにより、JUNOとIZUMO1との相互作用に重要な領域を明らかにすることに成功しています。
本研究の成果から、JUNO/IZUMO1による哺乳類の受精メカニズムに関する理解が深まった一方、JUNO/IZUMO1以外の因子が配偶子の融合に重要であることも強く示唆されました。また、これまで伊川グループが行ってきた、遺伝子ノックアウト技術と生殖・受精にかかわる研究とを融合させることができたと言えます。特に近年ではCRISPR/Cas9システムのようなゲノム編集技術が、従来に比べて効果的な方法として目覚しい発展を遂げており、今後も、本研究で開発した技術がJUNO/IZUMO1を含めたさまざまな受精必須因子の研究に応用されていくことが期待されます。

(*1)細胞融合
2つの細胞が融合して1つの細胞になる現象。受精においては、精子と卵子が融合し受精卵となる。 (*2)IZUMO1とJUNO
IZUMO1は精子の細胞膜上に存在し受精に必須のタンパク質として2005年に本研究所岡部・伊川らの研究チームにより同定された。精子と卵子を結ぶタンパク質であることから、縁結びの出雲大社にちなんで名付けられた。
JUNOはIZUMO1のパートナーとなる卵子側の因子として9年後の2014年に同定された。JUNOはギリシャ神話の女神から命名されている。

 

プレスリリース資料(PDF)

東京大学からのプレスリリース

Nat Commun誌論文サイト