Proc. Natl. Acad. Sci. U S A 110:8111-6 2013/05/14

精子は、ただ単に正しい形や数そして運動性を持ち合わせただけでは機能できない。つまり、精子には受精能力を持つという重要なステップが存在する。今回、雄性生殖細胞特異的なGPIアンカータンパク質TEX101を欠損するマウスを作製したところ、精子の形態や運動性は正常にも関わらず、in vitroでは卵透明帯へ結合できず、in vivoでは子宮から卵子の待つ卵管へと移動できないという機能不全を示すことが明らかとなった。そして、TEX101と共役して働く受精に必須の精子膜タンパク質ADAM3の消失が原因であることも分かった。 また、血圧調整酵素として有名なACEにはアンギオテンシンを切断するジペプチダーゼ活性だけでなく、GPIアンカータンパク質を切断する活性があることも知られていたが、今回の解析により精子形成時にACEがGPIアンカータンパク質であるTEX101を切断することが、受精能を持つ精子を作るために必要であることが明らかとなった。これらの知見は受精のメカニズム解明のみならず、不妊症の診断や避妊薬の開発にも繋がることが期待される。