Science 341: 71-73 2013/07/05

タンパク質をコードしていないジャンク(不要な)DNAと呼ばれてきた領域から“タンパク質にはならない”noncoding RNA (ncRNA) ができてくることが知られているが、それらの動物個体レベルでの機能についてはいまだ不明な点が多い。microRNA (miRNA) は22塩基前後の短い鎖長をもつncRNAの1つで、配列中のシードシークエンスと呼ばれる部位と相補性をもつmRNA(標的mRNA)に結合してタンパク質への翻訳を阻害すると考えられている。我々はmiRNAのうちmiR-200bとmiR-429を欠損したマウスを作製し解析したところ欠損マウスの雌は排卵不全により不妊になることがわかった。そのしくみは下垂体においてmiR-200bとmiR-429がなくなると標的mRNAから作られる抑制性転写因子のZEB1が増加し、このために黄体形成ホルモン(LH)の正常な分泌が起こらなくなるためであった。排卵は種を維持していくために極めて大切なしくみであるが、今回の実験によりマイクロRNAが排卵のメカニズムを支える重要な因子であることが明らかになった。