野田成美 (医D2/2022年時点)情報伝達分野

Q1 微研に来られた経緯を教えて下さい。

私は微研に来るまで8年間呼吸器内科領域を専門とする医師として働いておりました。この領域は病態が未だ解明されておらず、重症COVID-19のように非可逆的障害を起こす疾患、肺癌のような致死的疾患も多く、いつかこれら疾患の治療法につながるような基礎研究に携わりたいと思いながら日々診療をしておりました。そんな中で私の所属する呼吸器・免疫内科学教室の熊ノ郷先生より、呼吸器疾患とも密接に関わる血管研究を専門とする高倉研をご紹介頂きました。実際に高倉先生に面談して頂き、血管再生を利用した臓器再生を目指している背景や、ラボ内の充実した環境をご案内頂き、是非私もこの研究室で研鑽を積ませて頂きたいと思い高倉研への進学を決めました。

Q2 現在の研究テーマを教えて下さい。

高倉研では肝臓において幹細胞性を有する血管内皮細胞マーカーを同定しましたが、血管内皮細胞は近年臓器特異性を有することが言われており、同定されたマーカーが肺にも応用できるとは限らず、また肺血管内でも多様性のある集団であることが分かってきており複数幹細胞/前駆細胞集団が存在する可能性があります。これまで肺血管内皮細胞においても幹細胞/前駆細胞の候補などは議論されてきましたが正確に解明はされていません。そのため肺血管における幹細胞を正しく同定し、そのメカニズムを調べると共に、将来的には人への応用へつなげるような仕事ができればと考え研究を進めています。

Q3 野田先生は臨床医としてもお仕事をされています。基礎研究と臨床と、お仕事の進め方や考え方の違いに戸惑ったりされたことはありますか?または、逆に共通するところはありますか?

臨床の仕事は人命に関わることも多く、決して失敗が許されないため、これまでに蓄積された知識・経験をもとにチームで議論を重ねながら安全かつ最適な治療法を選択することが重要です。一方で、基礎研究は、あくまで1年間のみの経験に基づく印象ですが、個人個人全く異なるテーマを扱い、かつ皆、世界中でまだ全く解明されていないことを解明すべく研究しておりますので、たくさんの失敗を重ねながら、個人が自分固有のテーマに対してより主体性をもって考察していく必要がある点が大きく異なると感じています。逆に共通点としては、臨床・基礎共にたくさんの経験値を重ねることで、新たな病態・メカニズムのヒントが得られる可能性があると感じており、ある程度のハードワークはいずれの仕事でも大切なのではないかと考えています。

Q4 博士号取得後、臨床に戻ったとき基礎研究の経験はどのように活かされるでしょうか?

目の前の患者さんに対して、経験論のみに基づいた一体一対応でアプローチするのではなく、どんなメカニズムで現在の病態が起こっているかを考えることで、検査や治療の選択肢の幅が広がると考えております。また、臨床研究を行う際にどんな切り口でアプローチを行うかのアイデアにもつながっていくのではないかと期待しております

Q5 博士号取得を検討している皆さんにメッセージをお願いします。

基礎研究は一つ一つのことに時間もかかれば、失敗の連続ですが、失敗の中にも驚きや新たな発見があることもあり、私自身は非常に充実した日々を送っております。また、研究する時間も自分で自由にある程度決めれるため家庭や子育てがある方にもフレキシビリティがあるのではないかと思います。将来研究をしたい人、博士号を取った後研究以外の仕事に戻る人、様々でしょうが、これまでと全く違なる環境に身をおいて仕事をするということは必ず人生のプラスになると私は思っています。是非一緒に微生物病研究所で研究を一緒にやりましょう。