3. どんな病気なの?

2020年7月30日

その他活動

更新情報

2021.10.27 サイトリニューアルを行い「阪大微研のやわらかサイエンス 感染症と免疫のQ&A」として新たにオープンしました。

今後コンテンツを充実させていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

新サイトはこちら

https://biken.yawaraka-science.com/

 

 

 

※以下リンク先の記事は主に2020年時点のものになります。弊所の最新記事は上記の新しいHPの方をご覧いただくようお願いいたします。

Q3-1. どんな症状があらわれるの?潜伏期間は? 
A. 

■症状

国立感染症研究所の調査では下記の症状が報告されています。

発熱  

79% 

咳 

76% 

肺炎 

63% 

全身倦怠感 

47% 

のどの痛み 

29% 

鼻水・鼻づまり 

25% 

頭痛 

24% 

下痢 

19% 

関節・筋肉痛 

14% 

吐き気・おう吐 

6% 

急性呼吸窮迫症候群(ARDS)

4% 

結膜充血 

2% 

国立感染症研究所による516例の症例報告(3月23日現在)

https://www.niid.go.jp/niid/ja/covid-19/9533-covid19-14-200323.html から転載

 

■症状の経過

https://www.mhlw.go.jp/content/000631552.pdf より改変

 

■潜伏期間 1~14日

感染してから症状が現れるまでの潜伏期間は1~14日(多くは3~7日)とされています。

ウイルスが体の中に入り、細胞に入り込んで増殖したら「感染」。さらにウイルスが増えて、咳や発熱などの症状が出たら「発症」。感染しても免疫などの働きでウイルスを抑え込み、発症しない人がいます。これを「不顕性感染」と言います。

(2020.7.29)

 

Q3-2. どうして風邪のような症状がでるの?
A. ウイルスが細胞に感染して細胞の中で増えると、細胞が傷ついたり死んだりします。ウイルスそのものや、ウイルスで傷ついた細胞、死んだ細胞を体が感知すると、免疫が作動してウイルスやウイルスが感染した細胞を排除しようとします。これが発熱や咳、炎症などの症状につながります。時には免疫の反応が激しく起こりすぎて炎症がひどくなり、重症化するケースも確認されています。最近よく聞く「サイトカインストーム」はこの現象です。
(2020.7.29)

 
Q3-3. 重症化しやすい人は?重症化するのはどういう場合?

A. ウイルスを撃退する免疫の働きが低下している人は重症化しやすい傾向にあります。高齢の人や、抗がん剤・免疫抑制剤を投与している人が該当します。

 

また、高血圧や糖尿病など基礎疾患のある人は、ウイルスによって引き起こされる炎症がひどくなりやすい傾向にあります。

血管は周りの組織と水分や栄養分など物質のやり取りをしていますが、がん組織や糖尿病などの患者さんの血管は、このやり取りが正常に機能していません。この物質のやり取りの異常が、炎症がひどくなりやすい原因の1つと考えられています。

 

この血管における物質のやりとりを正常化すると、感染症における炎症をおさえられるケースが知られています。今回の新型コロナウイルスによる肺炎の重症化も炎症による血管透過性の異常亢進が関係している可能性があります。

 

炎症は、私たちの体に備わる免疫の働きで制御されています。免疫が正常に機能するよう健康な状態を保つことがとても大切です。

(2020.7.29)


 

Q3-4. なぜ血管に症状が出るの?

A. 新型コロナウイルスが感染した場所(喉や肺など)では炎症がおきます。体を守るための炎症も、過度になると血管の細胞が傷つきます。また、傷ついたところから血液が漏れるのを防ぐため、血栓ができます。

 

炎症はどのように起こるのでしょうか。ウイルスなどの外敵が体内に入ると、排除するために免疫細胞の白血球(マクロファージや好中球など)が出動します。さらに、免疫反応を起こす「サイトカイン」というたんぱく質も分泌されます。このサイトカインは血管の細胞同士の結合をゆるめて、血管から組織に免疫細胞を移動しやすくします(図1)。
 
(図1)常の血管と炎症状態の血管
 

炎症を起こしていない状態では血管の外より内側の方が圧力が高く、血液中の物質は血管の細胞のわずかな隙間から漏れ出して圧力の高い方から低い方へ、血管から組織へと流れます。炎症状態になると血管の細胞同士の間が大きく開き、血管から組織へ物質が多く流れます。この状態を血管の透過性が上がっていると言います。この状態が続くと、血管内の圧が下がり、組織の圧が上がります。

 

さらに炎症状態が続き、サイトカインが過剰に放出される「サイトカインストーム」が生じると、サイトカインによって血管の細胞が傷つけられてしまいます。さらに、血管の中から外に物質が多く漏れて組織の圧力が高くなり、物質が組織に入っていかない状態になってしまいます。乾いた砂に水をまけばすぐに水を吸い込みますが、水を多く含んだ砂はもう水が吸い込まれないのと同じです。この水浸し状態が肺で起きれば呼吸困難をもたらす肺水腫などに至ります(図2)。このような状態になると、組織に感染したウイルスまで抗ウイルス薬などが届きません。

(図2)サイトカインストームが起きているときの血管
 

また、血管から物質が漏れ出るのを止めるため、血小板が集まります。血小板は細胞と細胞を結びつけるので血の塊ができ、それが血栓となって他の場所に飛んで血液を詰まらせることがあります。脳の血管が詰まると脳梗塞、肺の血管が詰まると肺血栓症になってしまいます。

新型コロナウイルスは血管の細胞に感染して増殖するので、血流に乗って全身に運ばれるだけでなく、血栓によって間接的に組織にダメージを与えることもあります。新型コロナウイルスの症状や後遺症が全身に及ぶのは「血管」がキーとなっています。

 

 

 

 
 

 

 

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