1. 敵を知ろう~新型コロナウイルスとは?

2020年7月30日

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2021.10.27 サイトリニューアルを行い「阪大微研のやわらかサイエンス 感染症と免疫のQ&A」として新たにオープンしました。

今後コンテンツを充実させていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

新サイトはこちら

https://biken.yawaraka-science.com/

 

※以下の記事は主に2020年時点のものになります。弊所の最新記事は上記の新しいHPの方をご覧いただくようお願いいたします。

 

Q1-1. コロナウイルスって何?
A. コロナウイルスは風邪や肺炎などを起こすウイルスの一種です。

■人に感染するコロナウイルスは7種類

人に感染するコロナウイルスは、これまで6種類が知られていました。そのうち4種類は一般的な風邪の原因となるウイルスで、ほとんどの人が6歳までに感染を経験します。

残りの2種類は、重い症状を引き起こすSARS(サーズ)コロナウイルスとMERS(マーズ)コロナウイルスです。今回の新型コロナウイルスは人に感染するコロナウイルスとしては7種類目で、SARS-CoV-2(サーズ・コブ・ツー)と名付けられました。SARSウイルス(SARS-CoV)に似ているためです。

一般的な風邪の原因となるコロナウイルス

HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV-NL63、HCoV-HKU1

ほとんどの人が6歳までに感染を経験します。日本以外にも世界中で確認されています。
SARS(重症急性呼吸器症候群、サーズ)コロナウイルス

2002年11月に中国南部の広東省で最初の患者が報告され、2003年8月まで大流行しました。

中国を中心に感染者8,096人、うち死者774人(9.6%)が確認されています。

https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/414-sars-intro.html

MERS(中東呼吸器症候群、マーズ)コロナウイルス

英国で2012年、中東に渡航歴のある患者からウイルスが初めて分離されました。

2019年11月までの推定感染者数は2494人、うち少なくとも858人(34.4%)が死亡したと発表されています。

https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/mers.html

新型コロナウイルスSARS-CoV-2

2019年中国湖北省武漢市において感染症が確認されました。

2020年11月の時点で、世界で感染者は累計6000万人以上、うち死者140万人以上が確認されています。

https://coronavirus.jhu.edu/map.html

[参考]

インフルエンザもウイルスが原因の感染症です。国内だけで年間推定1,000万人が感染するとされ、死亡者数は年間約1万人に達するとの推計もあります。
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/02.html#100

 

■コロナウイルスは「王冠(コロナ)」が名前の由来

コロナウイルスの大きさは約0.1µm(マイクロメートル)、つまり1mmの1万分の1しかなく、目に見えません。人の細胞よりもさらに小さいのです。ウイルスは、細胞内に入り込み、遺伝物質のRNAやたんぱく質を作る道具を勝手に使って増殖します。
コロナウイルスの形は球形で、外側に「スパイク」と呼ばれる突起が付いています。ここが王冠に似ているので、ラテン語の王冠を意味するコロナから「コロナウイルス」と名付けられました。このスパイクが、細胞の中に入るために必要です。 

(国立感染症研究所)
イラスト提供:阪大院修了(微研・神谷研)河内健吾 Ph.D.
(2020.11.27)

 
Q1-2. そもそもウイルスって何?
A. ウイルスは、遺伝子がたんぱく質などの殻で包まれてできている物体です。他の細胞に感染しないと増えることができません。
動植物の細胞や細菌も遺伝子やたんぱく質などからできていますが、ウイルスは比べものにならないくらい小さくシンプルな作りをしていて、DNAやRNAといった遺伝子がたんぱく質の殻で包まれているだけです。

    

 

 

また、ウイルスは自分だけでは増殖できず、増えるには細胞の中に入り込んで遺伝子やたんぱく質を作ってもらう必要があります。このため、生物ではないとされています。

 

   

イラスト提供:阪大院修了(微研・神谷研)河内健吾 Ph.D.

 

遺伝子は、ウイルスを形作ったりするたんぱく質の「設計図」です。ウイルスは増殖が速く、次々と世代交代するため、遺伝子の突然変異も頻繁に起こります。ウイルスと戦う免疫は、敵か味方かをたんぱく質の形で見分けているため、遺伝子の変異でウイルスのたんぱく質の形が変わると免疫が働きにくくなることもあります。変異が感染力に影響する可能性もあります。

今回の新型コロナウイルスは、世界各地への広がりや時間経過とともに突然変異が繰り返され、ヨーロッパ型や武漢型などさまざまなタイプが報告されています。

(2020.7.29)

 

【コラム】ウイルスは細胞を知り尽くしている?

ウイルスは細胞内にあるものをちゃっかりつかって自分を複製します。「ちゃっかりつかう」ためには、細胞内にどのようなものがどのように働いているのか、「理解」していないとできません。

私たち人間にも、細胞にはまだ分からないことがたくさんあるというのに...! 

なので、ウイルスを研究していると細胞についてもいろいろなことが分かります。また、細胞の中でウイルスが増殖しないような薬は治療薬になるので、ウイルスの増殖の研究は重要です。ウイルスを効果的に消毒するためにも、ウイルスの性質の研究は欠かせません。 


 
Q1-3. 細菌とは違うの?  抗生物質は効くの?
A. 細菌とウイルスは別物です。 抗生物質は細菌を退治するためにつくられた薬なので、ウイルスには効きません。

 

細菌は一つの細胞で、遺伝子やたんぱく質を作る装置を持っています。

ウイルスはそのような装置を持っていません。ウイルスが増えるためには、細胞の中に入り込んで、細胞のすねをかじりながら増殖します。

 

ウイルスは細胞の中でたくさん増え、細胞の外に出てきます。さらに別の細胞の中で増殖して……ということを繰り返し、体の中に広がっていきます。
体はウイルスを外に追い出そうとして免疫が活性化し、咳や鼻水、発熱などの症状となってあらわれます。

 

抗生物質はさまざまな種類があり、どれも細菌の増殖の邪魔をして薬として働きます。ウイルスと細菌は増殖の仕方が異なるため、ウイルスに抗生物質は効きません。

抗ウイルス薬というウイルス用の薬もありますが、ウイルスは種類によって性質や増え方が大きく異なるので、あるウイルスに効く薬が別のウイルスにも効くとは限りません。新型コロナウイルスに対する抗ウイルス薬も、新型コロナウイルスの性質をよく理解して開発・実用化する必要があります。

(2020.7.29)

 

【コラム】全てが悪者じゃない! 

ウイルスや細菌のように、小さくて顕微鏡でしか見られない生物を「微生物」と総称します(厳密には、ウイルスは生物の最小単位である細胞を持たないので「生物」とは言えませんが)。 

微生物の中で、病気を引き起こすものを「病原体」といいます。 

微生物は私たちの周りにも、体の中にもうじゃうじゃ! 

でも、その中で病気を引き起こすのはごく僅かで、1%いるかいないかだろうと考えられています。 

 

Q1-4. 新型コロナウイルスは動物にも感染するの?

A. コロナウイルスは動物にも感染します。新型コロナウイルスが動物に感染する例も報告され始めています。

  

猫や豚、牛などさまざまな動物に感染するコロナウイルスが知られています。 

基本的に、猫のコロナウイルスは猫だけに、豚のコロナウイルスは豚だけに、人のコロナウイルスは人だけに感染すると考えられています。ただ、新型コロナウイルスが猫にも感染するという報告(https://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/about/press/page_00004.html)もあります。 

  

今回の新型コロナウイルスは、元々はコウモリが持っていたと考えられています。過去に感染の集団発生があったSARS(サーズ)コロナウイルスとMERS(マーズ)コロナウイルスもコウモリが発生源で、SARSはハクビシン、MERSはラクダなどに仲介されました。今回の新型コロナウイルスはコウモリから直接、人に感染した可能性もありますが、仲介動物がいると予測されています。 

  

コウモリから人に感染した時に、人に病気を起こす性質を持った可能性もありますが、詳しくは分かっていません。

(2020.7.29)

 

 

 

 
 

 

 

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