BIKENゲノム解析協働研究所  協働研究所概要

新型コロナウイルス大流行の次なるパンデミック発生に対応すべく、ゲノム解析を含めた疫学調査の実施体制強化や、個別化医療に伴うゲノム医療推進への参画は、国内の医学発展への観点から、重要な課題です。特に、ゲノム医療においては、更なる検査技術の開発や、高精度かつ品質が担保された検査実施体制の構築が求められています。

一般財団法人阪大微生物病研究会(以下、BIKEN財団)では、1934年の設立以来約90年にわたり臨床検査事業にて公衆衛生向上に貢献しており、新型コロナウイルス流行時には、PCR検査や変異株検査などを実施しました。近年では、先進検査技術の開発や導入、さらには診断薬の開発にも着手しています。

BIKENゲノム解析協働研究所の設置を通じて、大阪大学微生物病研究所附属バイオインフォマティクスセンターならびに免疫学フロンティア研究センターのゲノム解析室が有するゲノム解析技術と、BIKEN財団の臨床検査精度管理技術を融合することで、新規検査技術開発ならびにその実用化を目指した検査体制の構築が可能となり、新たなパンデミック時の対応や、国内のゲノム医療推進、そして将来の予防医学に対する新たな検査技術の構築を目指します。また、大学のゲノム解析研究者と、BIKEN財団の研究員ならびに臨床検査技師との交流を通じて、ゲノム領域の知見を相互に深めることが期待でき、基礎研究からゲノム医療領域への実用化までトータルで理解し、研究成果の社会還元を目指す人材育成にも取り組みます。

近年、遺伝子異常を網羅的に調べて診断や治療に役立てるクリニカルシークエンスが世界的に進められています。さらに、非常に複雑な構造変化を伴うゲノムの異常を見出すための先進的なゲノム解析技術の開発が必要になってきています。また、基礎研究領域では、感染症を含む各種疾患における重症化メカニズムの解明や発症に関わる遺伝子発現について不明瞭な点が多々存在します。この課題にアプローチする一つの手法として、シングルセル解析技術を活用することで、細胞表面タンパク質発現、抗原特異性、遺伝子発現などシングルセルプロファイリングを可能とし、疾患に対する新たな治療法や創薬の開発へのシーズ探索が可能となります。

本協働研究所では、外部機関とのネットワークを活用して、実際の臨床現場等で課題となっている項目や、未だ発症メカニズムが解明されていない疾患に対する課題を抽出し、現在の解析方法の改良や、新規解析技術の開発を行います。さらに、新規解析技術の実用化研究を実施することで、将来的には、先進ゲノム解析技術をもとに、医療現場や、研究機関への研究支援を通じて、ゲノム医療領域や創薬領域への貢献を目指します。