生体防御研究部門  代謝免疫学グループ

私たちの体は複数の臓器が連関して働き、健康を保っています。また感染症罹患時には免疫系を中心に各臓器が協調して病原体を排除します。当研究室では、特に代謝と免疫細胞に着目し研究を行います。(1)代謝シグナルの免疫細胞における役割、(2)免疫細胞が全身の代謝に与える影響の解明、(3)各種細胞における代謝シグナルの役割を研究しています。

マクロファージの新たな生理的役割の探索

マクロファージは、胎児が正常に発育するために機能し、成体においては死細胞の処理や組織修復に関わっています。また宿主防御機能として、パターン受容体で外来微生物の侵入を感知し、細菌などの病原微生物を貪食します。サイトカインを分泌し種々の免疫細胞を感染巣に呼び寄せ、炎症を惹起することもできます。

近年、糖尿病や臓器線維化、癌の進展などいくつかの病態において、マクロファージが疾患を促進している可能性が指摘されています。また前述した従来の機能とは異なるnon-canonical functionとして、褐色脂肪組織における熱産生にマクロファージが関与することや、房室結節での伝導促進への関与が報告されました。当研究室でも、マクロファージの未知なる機能をさらに解明していきたいと考えています。

リソソーム膜を中心とする細胞内代謝シグナルの新機能の探索

微生物病研究所で発見されたp18(Lamtor1)という蛋白を起点とし、リソソーム膜を中心とする代謝シグナルの機能解明を行っています。p18は他の蛋白と5者複合体Ragulatorを形成し、アミノ酸によるmTORC1活性化の足場になることが解明されました。キナーゼ複合体mTORC1は種々の栄養情報を集約し活性化され、下流で細胞増殖や蛋白合成に関わる複数のシグナルを一挙に活性化する代謝ハブとして知られていましたが、個々のシグナルを特異的に制御する機構が存在するかどうかは未解明でした。当グループでは、mTORC1がTFEBをリン酸化する際の基質特異的足場として、Ragulatorが必須であることを解明しました。今後もRagulatorの機能解明を進めていきます。

メンバー

  • 特任助教:木村 哲也
  • 特任教授:岡田 雅人(兼)

最近の代表的な論文

  • (1) The Ragulator complex serves as a substrate-specific mTORC1 scaffold in regulating the nuclear translocation of transcription factor EB. Kimura T., et al., J Biol Chem. (2022) 298:101744
    (2) The lysosomal Ragulator complex plays an essential role in leukocyte trafficking by activating myosin II. Nakatani T., et al., Nat Commun. (2021) 12:3333
    (3) p18/Lamtor1-mTORC1 signaling controls development of mucin-producing goblet cells in the intestine. Ito S., et al., Cell Struct Funct. (2020) 45:93-105.
    (4) Semaphorin 6D reverse signaling controls macrophage lipid metabolism and anti-inflammatory polarization. Kang S., et al., Nat Immunol. (2018) 19:561-570.
    (5) Lysosomal protein Lamtor1 controls innate immune responses via nuclear translocation of transcription factor EB. Hayama Y., et al., J Immunol (2018) 200:3790-3800.
    (6) Lamtor1 is critically required for CD4+ T cell proliferation and regulatory T cell suppressive function. Hosokawa T., et al., J Immunol (2017) 199:2008-2019.
    (7) Polarization of M2 macrophages requires Lamtor1 that integrates cytokine and amino-acid signals. Kimura T., et al., Nat Commun (2016) 7:13130