生体防御研究部門 免疫応答動態分野/鈴木研究室
免疫応答動態分野では、神経系と免疫系の相互作用の観点から免疫学の未開領域を切り拓くとともに、炎症性疾患の新たな治療法の開発を目指した研究を展開しています。
- 神経系による免疫制御の細胞・分子基盤の解明
神経系が免疫系の調節に関わっていることは古くから指摘されてきました。しかし、神経系からのインプットがどのようにして免疫系からのアウトプットに変換されるのか、そのメカニズムは今なお十分に理解されていません。そこで我々は、神経系による免疫制御のメカニズムを細胞・分子レベルで解明することを目的として研究に取り組んでいます。これまでの我々の研究から、交感神経がリンパ球の体内動態を制御する分子機構が明らかになりました(図1)。さらに、この仕組みが免疫応答の日内変動を生み出していることも突き止められました。近年、神経系と免疫系の相互作用は、生命科学領域の新しい研究テーマとして注目され、世界的に活発に研究が行われています。しかし、神経系による免疫制御の細胞・分子基盤については、未解明な点が数多く残されています。我々の研究室では、この新しい研究分野を開拓すべく研究を進めています。
- 炎症性疾患の病態解明と治療法開発
我々は、免疫細胞の動きを司るケモカイン受容体のシグナル制御因子として、copper metabolism MURR1 domain-containing (COMMD) 3とCOMMD8というタンパクから成る複合体(COMMD3/8複合体)を同定し、COMMD3/8複合体が生体内でのリンパ球の移動と免疫応答の成立に重要な役割を果たしていることを明らかにしました(図2)。さらに、最近の我々の研究から、COMMD3/8複合体が炎症性疾患の病態に関与することも示唆されています。そこで、我々の研究室では、COMMD3/8複合体をはじめとする免疫制御因子の炎症性疾患の病態における役割を解明するとともに、それらを標的とした炎症性疾患の治療法を開発することを目標として、疾病の治療に直結する研究にも取り組んでいます。
メンバー
- 教授: 鈴木 一博(兼)
- 助教: 中井 晶子(兼)
- 助教: 白井 太一朗(兼)
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最近の代表的な論文
- 1. The COMMD3/8 complex determines GRK6 specificity for chemoattractant receptors. Nakai, A., et al. J. Exp. Med. (2019) 216: 1630-1647.
2. Adrenergic control of the adaptive immune response by diurnal lymphocyte recirculation through lymph nodes. Suzuki, K., et al. J. Exp. Med. (2016) 213: 2567-2574.
3. Control of lymphocyte egress from lymph nodes through β2-adrenergic receptors. Nakai, A., et al. J. Exp. Med. (2014) 211: 2583-2598.
4. The sphingosine 1-phosphate receptor S1P2 maintains the homeostasis of germinal center B cells and promotes niche confinement. Green, J.A., et al. Nat. Immunol. (2011) 12: 672-680.
5. Visualizing B cell capture of cognate antigen from follicular dendritic cells. Suzuki, K., et al. J. Exp. Med. (2009) 206: 1485-1493.
6. Semaphorin 7A initiates T-cell-mediated inflammatory responses through α1β1 integrin. Suzuki, K., et al. Nature (2007) 446: 680-68