生体内抗体を抗原送達キャリアとして用いた 新たな経鼻ワクチンの開発(吉岡研がJCIに発表)

大阪大学大学院薬学研究科の河合惇志さん(博士後期課程大学院生(研究当時))、吉岡靖雄特任教授(常勤)(大阪大学先導的学際研究機構/微生物病研究所/薬学研究科/国際医工情報センター/感染症総合教育研究拠点/先端モダリティー・ドラッグデリバリーシステム研究センター、一般財団法人阪大微生物病研究会)らの研究グループは、過去の感染やワクチン接種により誘導された生体内抗体を抗原送達キャリアとして利用することで、経鼻ワクチンにおいてアジュバントを用いることなく、ワクチン抗原特異的な免疫応答を誘導可能であることを明らかとしました(左図)。本研究成果は、感染症に対する安全で有効な経鼻ワクチンの開発に大きく貢献することが期待されます。

 

  • 有効かつ安全な経鼻ワクチン※1を開発可能な基盤技術を開発。
  • これまで、組換え蛋白質をワクチン抗原として用いた経鼻ワクチンには、免疫賦活化剤(アジュバント)※2との併用が必要だった。本研究では、感染やワクチンなどにより誘導されている既存免疫を活用することで、アジュバント不要の経鼻ワクチンを開発可能であることを見出した。
  • COVID-19を含め、様々な感染症に対する経鼻ワクチンへの応用に期待。

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本研究成果は、2023年12月1日(金)(日本時間)に米国科学誌「Journal of Clinical Investigation」(オンライン)に掲載されました。

タイトル:“Intranasal immunization with an RBD-hemagglutinin fusion protein harnesses preexisting immunity to enhance antigen-specific responses”

著者名:Atsushi Kawai, Nagisa Tokunoh, Eigo Kawahara, Shigeyuki Tamiya, Shinya Okamura, Chikako Ono, Jessica Anindita, Hiroki Tanaka, Hidetaka Akita, Sho Yamasaki, Jun Kunisawa, Toru Okamoto, Yoshiharu Matsuura, Toshiro Hirai, Yasuo Yoshioka

用語説明

※1)経鼻ワクチン

従来までの注射するワクチンではなく、鼻から噴霧するワクチン。鼻組織でも効率的に抗体を誘導可能であり、呼吸器疾患を引き起こす病原体に対するワクチンとして期待されている。

 

※2)免疫賦活化剤(アジュバント)

樹状細胞などの免疫細胞を活性化する物質。抗原蛋白質と共にワクチンすることで、免疫応答を増強可能となる。注射型ワクチンでは、アルミニウム塩などのアジュバントが汎用されているものの、経鼻ワクチン用のアジュバントは実用化されていない。

  • 図:生体内に既に存在する抗体が認識する蛋白質(キャリア蛋白質)に、目的のワクチン抗原を融合させることで、生体内抗体を抗原送達キャリア(キャリア抗体)として利用可能な、新たなコンセプトに基づいた経鼻ワクチンを開発した。