精子がスリムな流線型になるメカニズムを発見(伊川研がPNASに発表)
遺伝子機能解析分野の嶋田 圭祐助教、伊川 正人教授、同大学院医学系研究科のPark Soojinさん(博士課程(研究当時)) らの研究グループは、精子が細胞質を取り除き、流線型になるために必須となるタンパク質”TSKS”の機能を明らかにしました。
【研究成果のポイント】
- 精子が細胞質を除去し、流線型(おたまじゃくし状)になるために必要なタンパク質TSKSを発見
- TSKS欠損マウスを作製すると、精子は流線型の形態になれず、雄マウスは不妊となった
- TSKSはヒト精子にも存在しており、男性不妊の診断や男性避妊薬の開発に繋がると期待
精子は雌の卵にたどり着くために、射出後にとても長い距離を泳いで移動する必要があります。精子はスムーズに雌の子宮および卵管内を進んで卵(卵母細胞)にたどり着くために、前進しやすい形状をとる必要があり、いわゆるおたまじゃくし状のスリムな形態(流線型)を有しています。
精子はもともと一般的な細胞の形状である円形の精子細胞が分化してできたものであり、大量の細胞質を有していたものです。その精子細胞内の大部分を占める細胞質がどのようにして取り除かれ、流線形の精子となれるのか、そのメカニズムについてはほとんど分かっていませんでした。
今回、伊川教授らの研究グループは、機能未知であったTSKSと呼ばれるタンパク質に着目しました。TSKSは雄の精子細胞の細胞質内に存在し、精子から細胞質を取り除き、精子をスリムな流線型にするために必須の因子であることを見つけました (左図)。TSKSはヒト精子にも存在することが知られており、本研究成果は男性不妊症の診断や男性避妊薬の開発に繋がると期待されます。
本研究成果は、米国科学誌「Proceedings of the National Academy of Sciences」に、3月7日(火)午前5時(日本時間)に公開されました。
タイトル:“TSKS localizes to nuage in spermatids and regulates cytoplasmic elimination during spermiation”
著者名:Keisuke Shimada, Soojin Park, Seiya Oura, Taichi Noda, Akane Morohoshi, Martin M. Matzuk, and Masahito Ikawa
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