コレラ菌が腸管定着に必要な分子を分泌する仕組みを解明(中村研がSci. Adv.に発表)
大阪大学微生物病研究所の中村昇太特任准教授(常勤)、沖大也特任研究員(常勤)、大阪大学大学院薬学研究科の河原一樹助教らの研究グループは、激しい下痢症の原因となるコレラ菌が、4型線毛と呼ばれる糸状の構造物を利用して定着に必須なタンパク質を菌体外に分泌する仕組みを世界にさきがけて明らかにしました。本研究成果は、薬剤耐性菌の出現が世界的な問題となっている抗生物質に替わる新規の治療薬の開発につながることが期待されます。
研究成果のポイント
- コレラ菌(図1)が腸管に感染するときに必要な定着因子※2と呼ばれる分泌タンパク質を、4型線毛(図1)という糸のような構造物が菌の外に運び出す仕組みを解明した。
- この定着因子が運び出される際に、4型線毛が目印にする特徴的なアミノ酸の並び方(シグナル配列)が存在することを明らかにした。
- シグナル配列部分を標的にした薬剤を開発することができれば、コレラ菌を腸管に定着させずに体外に排出させる治療薬など、耐性菌の出現が世界的な問題となっている抗生物質とは異なる新戦略による感染症対策に繋がることが期待される(図2)。
本研究成果は、2022年10月15日(土)午前3時(日本時間)に米国科学誌「Science Advances」(オンライン)に掲載されました。
タイトル:“Structural basis for the toxin-coregulated pilus-dependent secretion of Vibrio cholerae colonization factor”
著者名:Hiroya Oki*, Kazuki Kawahara*, Minato Iimori, Yuka Imoto, Haruka Nishiumi, Takahiro Maruno, Susumu Uchiyama, Yuki Muroga, Akihiro Yoshida, Takuya Yoshida, Tadayasu Ohkubo, Shigeaki Matsuda, Tetsuya Iida, and Shota Nakamura(*これらの研究者は,この研究に等しく貢献しました。)