免疫vsマラリア原虫 攻防の鍵を握るタンパク質RIFINの機能を解明、ワクチン開発にも期待(岩永研がNatureに発表)

本研究所の迫口瑛史助教(研究当時)、荒瀬尚教授(免疫学フロンティア研究センター兼務)、岩永史朗教授らの研究グループは、英国・オックスフォード大学のMatthews K. Higgins教授との共同研究により熱帯熱マラリア原虫とナチュラルキラー細胞が、それぞれ感染赤血球表面タンパク質と受容体を介して、互いに認識し攻防することを明らかにしました。

これまで熱帯熱マラリア原虫は感染赤血球表面上のRIFINというタンパク質を使い、免疫細胞を抑制することが明らかとなっていましたが、ヒト免疫細胞側の応答や攻撃については不明でした。

今回、研究グループはRIFINがナチュラルキラー細胞の抑制化受容体を刺激してその機能を抑制する一方で、ナチュラルキラー細胞は活性化受容体を介して原虫感染赤血球を特異的に攻撃することを明らかとしました。さらに同定したRIFINと類似のRIFINは世界中の原虫株に存在し、原虫とヒトは共通の機構で攻防することを明らかとしました。これらのことより、ナチュラルキラー細胞の受容体と結びつくRIFINを標的とした新たなマラリアワクチンの開発が期待されます。

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本研究成果は、2025年6月12日(木)0時(日本時間)に英国科学誌「Nature」(オンライン)に掲載されました。

タイトル:“RIFINs displayed on malaria-infected erythrocytes binds both KIR2DL1 and KIR2DS1”

著者名:Akihito Sakoguchi, Samuel G. Chamberlain, Alexander M. Morch, Marcus Widdenss, ThomasE. Harrison, Michael L. Dustin, Hisashi Arase, Matthews K. Higgins, and Shiroh Iwanaga

DOI:https://doi.org/10.1038/s41586-025-09091-y

 

  • ナチュラルキラー細胞と熱帯熱マラリア原虫との攻防

    熱帯熱マラリア原虫はナチュラルキラー細胞の抑制化受容体KIR2DL1を利用して免疫応答から回避する。逆に我々人間は活性化受容体KIR2DS1を獲得することによってマラリア原虫に対する感染抵抗性を獲得した。

  • RIFINによるナチュラルキラー細胞の抑制

    RIFINはKIR2DL1を発現するナチュラルキラー細胞の細胞傷害活性の活性化を顕著に抑制する(青色矢印)。

    (本図は、Adapted from Sakoguchi et al., RIFINs displayed on malaria-infected erythrocytes binds both KIR2DL1 and KIR2DS1, Nature, 2025, Springer Nature掲載図をもとに一部改変しています。)

  • RIFINによるナチュラルキラー細胞の活性化

    KIR2DS1を発現するナチュラルキラー細胞はRIFINを特異的に認識して細胞傷害活性を活性化する(赤色矢印)。

    (本図は、Adapted from Sakoguchi et al., RIFINs displayed on malaria-infected erythrocytes binds both KIR2DL1 and KIR2DS1, Nature, 2025, Springer Nature掲載図をもとに一部改変しています。)