Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 111: 3787-92 2014/03/11

自己免疫疾患は、自己分子に対する抗体等が自己組織を誤って攻撃してしまうことで生じる疾患です。しかし、なぜ自己免疫疾患で自己抗体が産生されるかは、依然として明らかでありません。主要組織適合抗原クラスII(MHC class II)分子は、細胞内外のタンパク質が細胞内でペプチドに分解されたものを細胞表面に輸送してヘルパーT細胞に抗原として提示することで、免疫応答の中心を担っています。一方で、MHC class II分子は、自己免疫疾患の罹りやすさに最も影響を与える原因遺伝子として知られていますが、MHC class II分子がどのように自己免疫疾患を引き起こすかも明らかでありませんでした。本研究では、通常は速やかに分解されてしまう細胞内の変性蛋白質が、MHC class II分子によって細胞外へ誤って輸送されてしまい、その変性蛋白質が自己抗体の標的分子であることを世界で初めて明らかにしました。つまり、MHC class II分子が細胞内の変性蛋白質を自己応答性のB細胞に提示することが自己免疫疾患の原因であると考えられました。実際に、関節リウマチ患者の血液を解析すると、MHC class II分子によって細胞外へ運ばれた変性蛋白質に対する特異的な自己抗体が認められることが判明しました。さらに、変性蛋白質と結合しやすいMHC class II分子を持っているヒトは持っていないヒトに比べて10倍以上も関節リウマチになりやすいことを発見しました。これらの結果から、MHC class II分子によって細胞外へ輸送されてしまった細胞内の変性蛋白質が、自己免疫疾患の発症に関与していることが判明しました。本研究によって、今まで考えられてきた自己免疫疾患の発症機序とは全く異なる新たな発症機序が明らかになり、自己免疫疾患でなぜ自己抗体が産生されるのか、なぜMHC class II分子が自己免疫疾患に関わっているかという長年の自己免疫疾患の謎を解明する上で、非常に重要な発見です。関節リウマチに限らず、その他多くの自己免疫疾患も同様な発症メカニズムが考えられるため、本研究成果は、今後、多くの自己免疫疾患の治療薬や診断薬の開発に貢献することが期待されます。詳しい説明はhttp://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2014/20140225_1です。