Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 107: 866-871 (2010)
水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)は、主に小児に水痘を引き起こし、高齢者や免疫機能が低下した人に帯状疱疹を引き起こす他、脳炎や髄膜炎を引き起こし重症化することもある病原性ウイルスである。水痘帯状疱疹ウイルスの感染の際には、ウイルスと細胞膜間で膜融合が引き起こされウイルス粒子が細胞内へ侵入するが、その分子機序は長年不明であった。本研究では、神経組織特異的なMyelin Associated Glycoprotein (MAG)に、ウイルス粒子表面の糖タンパク質の一つであるグライコプロテインBが結合し、ウイルス感染の際の膜融合が引き起こされることを解明した。また、水痘帯状疱疹ウイルスと同様に神経組織に感染する単純ヘルペスウイルス(HSV)の感染にも、MAGが感染の際の膜融合を引き起こすことが判明した。 以上より、MAGは、これらの神経指向性のウイルスの神経組織への感染に関与していると考えられた。