PLoS Genet. 10:e1004320 2014/05/01
「GPIアンカーリモデリング欠損症の発見」
ヒトのタンパク質のうち少なくとも150種が、糖脂質であるグリコシルホスファチジルイノシトール (GPI) によって細胞表面にアンカーされているGPIアンカー型タンパク質 (GPI-AP) です。小胞体でできたGPI-AP前駆体は、PGAP1、PGAP3、PGAP2の3つの遺伝子産物の働きで脂質部分のリモデリングを受けて成熟型GPI-APとなり、細胞表面の脂質ラフトに局在して発現します。PGAP1欠損細胞では、イノシトールに結合した脂肪酸が除去されないまま、3本足構造の異常なアンカーを持ったGPI-APが細胞表面に発現します。3本足のGPI-APは、細菌由来のGPI特異的ホスフォリパーゼC (PI-PLC)に抵抗性であるという特徴があります。PGAP3欠損細胞では、sn2位の不飽和脂肪酸が飽和脂肪酸に入れ替わらず、ラフトに親和性のない構造のまま細胞表面に発現します。今回、ドイツとイギリスの研究グループとの共同研究で、PGAP1遺伝子の変異によって知的障害が起こること(PLoS Genet., 10(5):e1004320)、またPGAP3遺伝子の変異によって、高アルカリホスファターゼ血症を伴い知的障害とてんかんを特徴とする疾患が起こることを見出しました(Am. J. Hum. Genet., 94:278-287)。これらの結果は、GPIアンカーの正確な脂質構造が神経系の発達と機能に重要であることを示しています。