Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 111:11804-9 2014/08/12

レジオネラ・ニューモフィラ (Legionella phneumophila) はヒトに重篤な肺炎を引き起こす病原細菌として知られています。宿主に病態を引き起こすためには、レジオネラの中で合成された数多くのタンパク質が宿主細胞内に注入される必要があります。このタンパク質輸送を担っている特殊な分泌系がレジオネラの表面に存在するIV型分泌系 (type IV secretion system) です。この分泌系を通って宿主細胞内に送り込まれたタンパク質群が宿主の機構を乗っ取り、あるいは攪乱し、レジオネラが宿主細胞内で生きながらえて宿主を攻撃することを可能にするのです。私たちは感染成立の鍵を担うIV型分泌系の中核複合体を生化学的に単離し、その分子構造を電子顕微鏡を用いて初めて明らかにすることに成功しました。それは、中心に穴のあいたドーナツ状の構造体でした。この中核複合体は5つのタンパク質から構成されていることが分かりました。5つのコンポーネントタンパク質のうちのひとつ、DotG を欠損するとドーナツの穴が大きくなることから、DotG は構造体の中心に位置する重要な部品であることが分かりました。また、DotF は欠損しても分泌系の輸送機能は保持されるためその役割が不明でしたが、DotFを欠損すると穴の大きなドーナツと穴の小さなドーナツが共存することから、DotF は DotG を効率的に構造に組み込むことによって分泌系の構築を助ける部品であることがわかりました。IV型分泌系の構築機構の解明は、細菌感染を食い止める薬剤の開発に繋がると考えられます。