PLoSPathogens 10(12): e1004534 2014/12/11

C型肝炎ウイルス(HCV)は脂肪肝、肝硬変、肝細胞癌等の慢性肝疾患の主要原因ウイルスですが、in vitroの培養系はヒト肝癌由来のHuh7細胞と特定の実験室株に限定されており、HCVの本当の感染環は未だ不明な点が多く残されています。これまでの報告から、VLDLなどのリポ蛋白質の表面に結合するアポリポ蛋白質がHCVの感染性粒子形成に関与することが示唆されていますが、その詳細は不明のままでした。今回私達は、Huh7細胞で発現量の高いアポリポ蛋白質のApoBとApoEを人工ヌクレアーゼで欠損させた細胞株を樹立するとともに、ヒト肝細胞ではHuh7細胞等のヒト肝癌細胞株とは異なり、ApoBやApoEだけでなく、ApoAやApoCも同等に高く発現していることを見いだしました。そこで、ApoAやApoCをApoB/ApoE欠損細胞に発現させると、HCVの粒子産生は回復しました。さらに、これらのアポリポ蛋白質が共通して保持している両親媒性のαヘリックスを介して、HCVの粒子表面に結合することが感染性粒子の産生に重要であることを明らかにしました。これらの成績は、HCVが肝臓に馴化する過程で、豊富に存在するアポリポ蛋白質を感染性粒子の産生に利用したことを示唆しており、ウイルスの組織適応を考える上で非常に興味深いものです。