Proc. Natl. Acad. Sci. U S A 109:3850-3855 (2012)2012/03/06

タンパク質のフォールディングに必要なS-S結合を触媒するPDI酵素(プロテイン ジスルフィド イソメラーゼ)は約20種類存在するが、精巣特異的な因子としてPDILTが報告されている。今回我々は、PDILTが精子膜タンパク質ADAM3のフォールディングに必須であり、そのノックアウト (KO) マウスが雄性不妊となることを見出した。ADAM3を失ったPDILT-KO精子は、見かけや運動性は正常であるにも関わらず、子宮から卵管に上れないために受精できなかった(遺伝子操作により蛍光を発する精子として観察)(図A, B)。しかし精子を人工的に卵管へ注入したところ、受精・妊娠・分娩に至った(図C, D)。今回の結果は、ADAM3を欠失した精子にみられる卵子透明帯への結合不全が不妊の原因でないことを示すだけでなく、広く研究者に信じられている精子と透明帯の結合の重要性そのものにも疑問を投げかける。