Cell Host Microbe. 12:109-116 2012/07/19

好中球は、ゲノムDNAから構成される網目状の細胞外構造体Neutrophil Extracellular Traps (NETs)を産生し、細菌や真菌の排除を担っている。NETs上には抗ウイルス因子であるミエロパーオキシダーゼやアルファディフェンシンが存在しているが、NETsがウイルスに対する感染防御にも関わっているかどうかについては不明であった。本研究では、ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1)に対する感染防御におけるNETsの役割に関して解析を行った。好中球は、ウイルスRNAを認識する病原体センサーであるToll-like receptor (TLR)7/8によりHIV-1を感知し、NADPHオキシダーゼ依存的に活性酸素種を産生する。活性酸素種は、膜の損傷や好中球エラスターゼの活性化を介してNETsの産生を誘導する。NETsは、HIV-1を捕捉してミエロパーオキシダーゼやアルファディフェンシンにより失活させる。一方で、HIV-1はC-type lectinであるCD209を利用して樹状細胞からのIL-10産生を促し、TLR7/8依存的なNETsの産生を抑制する。これらの解析結果は、NETsはHIV-1に対する感染防御機構であること、そしてHIV-1はこの感染防御機構から逃れる術を有していることを示している。