Nature 463: 84-87 (2010)

内在性レトロウイルスは、さまざまな生物のゲノムに残された「ウイルス化石」であり、ヒトゲノムの約8%は内在性レトロウイルス由来の配列で占められている。これまで、レトロウイルス以外のウイルスが生物ゲノムに内在化していることは知られていなかった。ボルナウイルスは細胞核で持続感染する一本鎖 マイナス鎖RNAウイルスである。今回、私たちはヒトなどさまざまな哺乳動物のゲノム内にボルナウイルスのN遺伝子が広く内在化していることを発見した。 内在性ボルナ様N因子(EBLN)と名付けられたこの遺伝子は、霊長類では機能を持つ可能性が示された。また、ボルナウイルス持続感染細胞では、N mRNAが逆転写され、宿主ゲノムに挿入されることも明らかとなった。また、この現象はレトロトランスポゾンの一種であるLINE1を介して行われている可能性も示された。