Research

微生物病研究所 臨床感染症学研究グループ


   

MERSコロナウイルスに関して

T Yutaka, et al, Virology, 2017


 MERSコロナウイルスのnsp1がウイルスのUTRと特異的に結合することを明らかにしました。この結合はコロナウイルスで保存されており創薬の標的となる可能性があります(上図)。また、ウイルスのUTRと結合する場所は同じコロナウイルスのnsp1でも異なる可能市が示唆され、今後さらに詳細な解析をすることによりコロナウイルスで保存されているnsp1の機能が明らかにできると期待されます。


SARSコロナウイルスに関して

Y Sakai, et al, Virology, 2017


 SARSコロナウイルスのnsp4のnsp3との結合領域をIFAと免疫沈降法により同定(上図)し、コロナウイルスの遺伝子操作系を用いてウイルスの複製に重要であることを明らかにしました。

コロナウイルスに関して


 
コロナウイルスはRNAウイルスの中でも最長のゲノム長であるため、ウイルスの遺伝子操作系はごく限られた研究グループのみで行われています。私たちのグループでも、コロナウイルスの遺伝子操作系の重要性を考慮して、その作製を試みています。今後は、このコロナウイルスの遺伝子操作系を用いて、コロナウイルスの中でも特にSARSコロナウイルスとMERSコロナウイルスの病態解明に取り組む予定です。 


SARSコロナウイルスに関して

Tanaka et al, JVI 2012


 
SARSコロナウイルスのnsp1タンパク質がウイルス由来のRNAの非翻訳領域(UTR)と特異的に結合することで、宿主由来のRNAとウイルス由来のRNAを区別する。そして、宿主由来のRNAからの遺伝子発現をリボゾームの不活化とmRNAの切断により強力に抑えます。一方、nsp1タンパク質は、ウイルス由来のRNAのUTRとの結合を介して、タンパク質合成が亢進するように働きます。


SARSコロナウイルスに関して

Kamitani et al, NSMB, 2009


 
SARSコロナウイルスのnsp1タンパク質が40Sリボゾームと結合します。その結合により、60Sリボゾームの40Sリボゾームへの結合が阻害されます。このように、リボゾームの形成が正常に行われないため、nsp1タンパク質存在下では、タンパク質の合成が抑制されます。さらに、nsp1タンパク質は、40Sリボゾームを足場としてmRNAの切断を促進します。nsp1タンパク質は、これら2つの作用により強力に遺伝子発現を抑制します。


SARSコロナウイルスに関して

Kamitani et al, PNAS 2006


 
SARSコロナウイルスの非構造タンパク質の一つであるnsp1タンパク質は、180個のアミノ酸からなる分子量約20 kDaの細胞質に局在するタンパク質です。このnsp1タンパク質は、メッセンジャーRNA(mRNA)を細胞質で速やかに分解します。このmRNAの分解により、感染細胞内では、IFNなどの産生が抑制されます。