上皮細胞でのPRLの機能を詳細に解析するため、培養系での実験に汎用されているMDCK細胞でPRLを誘導発現したところ、正常細胞で取り囲まれた状態の時に特異的に細胞形態が大きく変化しました。また一部の細胞では底面側のマトリックスゲルに潜り込む様子も観察されています。このことはPRLを発現する細胞としない細胞の間で何らかの相互作用(コミュニケーション)が起こり、その結果として浸潤などの現象が誘発されている可能性を示唆しており、その分子機構の解析を進めています。
多細胞生物の生体内組織は一般にin vitroでの培養が困難ですが、腸上皮組織に関しては生体内を模した細胞外マトリックスのゲルの中で3次元培養する方法(オルガノイド培養)が最近開発されており、生体内と同様に細胞が分化して単層の組織からなる立体の構築物を作ることが知られています(図2)。このオルガノイド培養系を利用して、正常な腸上皮組織内での増殖や分化におけるPRL/CNNMの働きや、腸上皮からのがん化における役割について解析しています。