マイコプラズマの炎症誘導因子
2012年12月13日
イベント・セミナー
演題: マイコプラズマの炎症誘導因子
演者: 清水 隆 先生
(山口大学 共同獣医学部 獣医公衆衛生学教室 准教授)
日時: 2013年1月9日(水)16:00~
場所: 微生物病研究所 本館1階 微研ホール
【要 旨】
マイコプラズマは人工培地で培養できる最小の細菌で、細胞壁や外膜を持たないことを特徴とする。 ヒトにおいてはMycoplasma pneumoniaeが肺炎、M.genitalium、Ureaplasma urealyticumが尿道炎を引き起こすことが知られている。マイコプラズマは毒素やプロテアーゼの産生に乏しく、どのような因子が病原性に関与しているのかは詳細に検討されてこなかった。 炎症性サイトカインの誘導が病態の重篤度と相関することから、過度の炎症誘導がマイコプラズマの病原性因子の1つであると考えられていた。 我々はこれらの病原性マイコプラズマから炎症を誘導する因子を分離同定した。 その結果、マイコプラズマのリポプロテインがToll-like receptor(TLR)2を介して炎症を誘導することが明らかとなった。
しかしながら、TLR2 KOマウスを用いた研究ではTLR2 KOマウスにおいてマイコプラズマの誘導する炎症が増強することが明らかとなった。 このTLR2非依存的炎症誘導は熱や抗生物質で不活化したマイコプラズマでは見られないことから、マイコプラズマの何らかの生体反応が炎症誘導には重要であることが示唆された。 また、このTLR2非依存的炎症誘導はTLR4に依存的であることが明らかとなった。 マイコプラズマでは既存のTLR4リガンドの存在は報告がなく、現在そのリガンドを探索中である。
また、マイコプラズマは宿主細胞に強く接着し、表面を滑るように移動する、滑走運動を示す。 この接着・運動がマイコプラズマの病原性にどのように関与しているのかは解っていなかった。 そこで、接着・滑走を示さない変異株を使用し、その炎症誘導能を比較した。 その結果、変異株では炎症反応が有意に減少していた。 我々は、マイコプラズマの接着・運動は感染細胞からATPを遊離させることにより、レセプターであるP2X7レセプターを介して細胞内レセプターであるインフラマソームを活性化し、炎症誘導を増強していることを明らかとした。
以上のことからマイコプラズマはリポプロテイン、TLR4リガンド、接着・運動を介して宿主細胞に炎症を誘導していると考えられた。
連絡先: 大阪大学微生物病研究所
細胞機能分野
目加田 英輔
Tel: 06-6879-8286
*このセミナーは医学系研究科修士課程の単位認定セミナーです。
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