1/28(火)セミナー開催:エピゲノム動態から器官再生を支える転写制御機構を紐解く

2025年1月14日

イベント・セミナー

演 題と講演者

エピゲノム動態から器官再生を支える転写制御機構を紐解く
 

川口茜  先生

国立遺伝学研究所 分子生命史研究室 助教

日時

2025年1月28日(火)16:30〜

場所 大阪大学 微生物病研究所本館 微研ホール(吹田キャンパス)
概要

脊椎動物の総遺伝子数は種間でほぼ変わらない一方で、それをコードするゲノムサイズは種間で大きく異なる。例えば、ヒトは2万2千遺伝子に対して約3.2Gbのゲノム長であるが、有尾両生類に属するアホロートルは2万3千遺伝子に対して32Gbのゲノムを持つ。これまでの知見から、ゲノムサイズの違いがゲノムの三次元立体構造や相互作用スケール、およびそれらに伴う遺伝子発現制御への作用、さらには細胞分裂期には娘細胞への正確な染色体分配を保証する特異的な機構が予想される。本演題では、アホロートルの巨大なゲノム三次元構造制御の視点から、ゲノムの高次相互作用、転写単位の構成など、ヒト、マウスやツメガエルなどのゲノムと比較しながらそれらの違いについて考察する。

巨大ゲノムの三次元構造のモデルとしてアホロートルのゲノム情報を構築するため、まず我々は、Hi-C(High through-put Chromatin Conformation Capture)解析を行った。これにより、染色体間の相互作用マップを同定することが可能になったうえ、ゲノム中に大量に存在する反復配列を考慮したHi-Cアルゴリズムを併用することでアホロートルゲノムの染色体スケールでのアセンブリに成功した。このHi-Cデータから得られたゲノムの“相互作用地図”は、アホロートルが持つ14対の染色体情報を精確なものに確立したのみならず、転写の制御単位である高次染色体構造(TAD:Topological Association Domain:ゲノムの高次構造を伴う転写の制御単位)の同定、脊椎動物間でのTADの比較解析や、非コード領域に存在する遺伝子の発現制御領域群(CNEs:Conserved Non-cording Elements)、そしてATAC-seq(Assay for Transposase-Accessible Chromatin)による、再生という文脈特異的に機能するエンハンサー領域の同定に成功した。これらのデータをもとに、古くから生物学者を魅了し続けてきた長年の疑問「有尾両生類は、どのようにして失った手足を正確に再生するのか?」について議論したい。

References

 (* Co-first author)

Kawaguchi A.*, Wang J.* et al. Chromatin states at homeoprotein loci distinguish axolotl limb segments prior to regeneration. Dev Cell. 2024 . 

Schloissnig S.*, Kawaguchi A. * et al. The giant axolotl genome uncovers the evolution, scaling, and transcriptional control of complex gene loci. PNAS. 2021. 

※本セミナーは医学系研究科、生命機能研究科、理学研究科の修士・博士課程の単位認定セミナーです。

 

Contact︓微生物病研究所生体統御分野 石谷太
研究室/内線:8358

mail: ishitani*biken.osaka-u.ac.jp (*を@に変えて下さい)

 

ポスター(PDF)はこちらから

 

 

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