ハマダラカ系統間解析を用いてマラリア原虫媒介性を探る
2011年10月27日
イベント・セミナー
ハマダラカ系統間解析を用いてマラリア原虫媒介性を探る
演題: ハマダラカ系統間解析を用いてマラリア原虫媒介性を探る
演者: 新澤 直明 先生
(愛媛大学大学院 医学系研究科 寄生病原体学分野)
日時: 2011年10月20日(木)16:00~
場所: 微生物病研究所 本館1階 微研ホール
抄録
マラリアは世界中で年間100万人以上が死亡する重大な原虫性感染症である。 マラリアの原因病原体であるPlasmodium属原虫は主に病原体媒介節足動物(ベクター)であるAnopheles属 ハマダラカの媒介によって感染が伝播する。 吸血と共にハマダラカ体内に侵入したマラリア原虫は、中腸内腔・中腸基底膜・唾液腺の順にハマダラカ体内の 様々な組織へと移行しながら分化・発生を繰り返す。 ベクターとマラリア原虫の間には特殊な種間関係が存在し、原虫種とハマダラカ種の適合の結果、初めて ハマダラカによるマラリア原虫の媒介が成立する。 その種間適合は、マラリア原虫とハマダラカ間の生物間相互作用のバリエーションに影響されることが推測 される。 しかし、そのメカニズムの多くは依然として明らかになっていない。 そこで、我々は南アジア地方でヒト熱帯熱マラリア原虫を媒介するハマダラカ であるA. stephensiの系統間比較を行うことにより、ハマダラカによるマラリア媒介能を左右するベクター・マラリア間相互作用の実態を解明することを試みた。 げっ歯類特異的マラリア原虫を用いた吸血感染実験を行った結果、高い感染抵抗性を示した野生型A. stephensi系統(Refractory strain)では中腸内でのマラリア原虫が正常に分化しないことを見出した。 中腸内でのハマダラカ・マラリア原虫間相互作用のバリエーションにより、マラリア原虫の媒介能が決定することが強く示唆される。 現在、A. stephensi系 統間での発現量に差のある差次的遺伝子に着目し、マラリア媒介能を左右するベクター側因子の同定を試みている。 本発表では、ハマダラカはどのようにして マラリア原虫のベクターとなるか、という生物学的疑問に対してハマダラカ・マラリア原虫間相互作用を中心とした議論を行いたい。
連絡先: 微生物病研究所
分子細菌学分野
堀口 安彦
TEL: 06-6879-8284(内線8284)
E-mail: horiguti@biken.osaka-u.ac.jp
*このセミナーは、医学系研究科医学修士の単位認定セミナーです。
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