最終講義「生殖細胞の研究」

 

(1)哺乳類雄性生殖細胞の完全な培養系は、いまだに確立されていません。私たちはまず、解析系を単純化するために、in vitroでの解析系として、精細管の器官培養系を確立しました。この器官培養系により、哺乳類の精巣の温度感受性が分化型精原細胞のDNA合成への影響によることを明らかにしました。
(2)ついで、この温度感受性をさらに検証するために、可逆的停留睾丸手術法を開発し、温度感受性が可逆的であることを証明しました。さらに、この人為的停留睾丸の精細管を培養し、精原細胞の分化にc-kitとkit ligandが重要な働きをしていることを示しました。
(3)この幹細胞からの分化の制御機構をさらに解析するために、テラトカルシノーマ由来細胞株に着目し、分化にはDNA合成期(S期)の進行阻害が関与することを突き止めました。また遺伝的にS期の障害を高温条件下で引き起こすts(temperature-sensitive)mutants を分離し、この変異株の増殖が高温条件下において、S期で障害されるとともに分化に切り替わることを示しました。 (3/5)

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