最終講義「生殖細胞の研究」

 

 現在地球上の人口は60億人を超えており今世紀中に100億を越えるのではないかと言われています。特に発展途上国や一部都市など特定の地域に人口が集中することを考えると食糧問題や感染症の流行など、人口増大に伴い、解決を迫られる問題が山積してくるものと憂慮されます。一方、我が国では出生率が減少し、高齢少子化がすすみ今世紀中に人口は半減してもおかしくない状況にあります。さらに、我が国を含む欧米諸国では夫婦の10組に1組以上が不妊であると言われており出生率低下の拍車要因の一つとなっています。これらの一見矛盾する地球規模での人口問題は、いずれも生殖細胞の基本的メカニズムを理解しその制御を可能にして始めて根本的解決が可能となるのではないでしょうか。不妊症の原因はほぼ男女半々ですが、特に男性不妊の原因は多岐にわたり、そのほとんどが未解明のままです。ここでお話しましたように、マウスで得られた知見をヒトに応用することによって、今後、ヒト男性不妊症の原因が究明され、その診断・治療法の確立されていくものと期待しております。これらの成果はまた逆に人類全体の生殖制御法の開発にも大きな手掛かりを与えるものと考えています。(5/5)

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