感染機構研究部門 ウイルス感染制御分野/塩田研究室
当研究室では20年に渡りヒ卜免疫不全ウイルス(HIV)の研究を続けてきましたが、2015年よりタイ王国マヒドン大阪感染症研究センターと蚊媒介性ウイルス感染症の共同研究を開始したことをきっかけに、現在ではデングウイルス(DENV)とチクングニアウイルス(CHIKV)の研究を中心に行っています。HIV研究でこれまでに培った現地との人脈を生かした疫学研究をタイで、疫学研究から得られた知見の検証を日本で展開するとともに、新型コロナウイルスの研究も行っています。
DENV・CHIKVの涜行動態調査と性状解析
DENVとCHIKVはヤブ蚊で媒介され、熱性疾患を引き起こします。デング熱は過去の感染に起因する抗体が関与する機構により、解熱後に出血熱で重症化する例が5%ほどありますが、詳しいことはわかっていません。当研究室では、タイで行うウイルスの遺伝子配列の分子時計計算から、ウイルスの流行動態を解析しています。さらに分離ウイルスの中には感染力の異なるウイルスがあり、ウイルスの感染力の遣いが流行に及ぼす影響を調べています。また感染力の異なるウイルスを比較することにより、ウイルスの増殖過程に必要な分子を割り出すことを試みています。
抗DENV抗体の作出と解析
抗DENV抗体には中和活性と感染増強活性の2つの側面があります。単クローン抗体を解析することにより、感染増強活性がなく中和活性のみを示す抗体とはどんな抗体なのか?を検索しています。デングウイルスには4つの血清型があり、これまでに全ての血清型を中和する抗体や、1つの血清型のみ100倍薄い濃度でも中和できる抗体などを見出しています。これらの抗体の中で感染増強活性がないものは「抗体薬」の可能性を秘めています。さらに感染しでも症状を示さなかった不顕性感染者の解析も予定しています。
新型コロナウイルス
抗原検出イムノクロマト法の開発と、重症化因子の探索、臨床検体から分離したウイルスの性状解析などを行っています。
メンバー
- 教授: 塩田 達雄
- 准教授: 中山 英美
- 助教: 佐々木 正大
- 特任研究員: Juthamas Phadungsombat
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最近の代表的な論文
- (1) Genetic regions affecting the replication and pathogenicity of dengue virus type 2. Samune Y, et al., PLoS Negl Trop Dis.(2024) 18:e0011885
(2) Enhancement of IL-6 Production Induced by SARS-CoV-2 Nucleocapsid Protein and Bangladeshi COVID-19 Patients' Sera. Hasan A, et al., Viruses. (2023) 15:2018.
(3) Changes in Anti-SARS-CoV-2 Antibody Titers of Pooled Plasma Derived From Donors in Japan: A Potential Tool for Mass-Immunity Evaluation. Yunoki M, et al., J Infect Dis. (2023) 228:889-894.
(4) Genetic Analysis of Dengue Virus in Severe and Non-Severe Cases in Dhaka, Bangladesh, in 2018-2022. Rahim R, et al., Viruses.(2023) 15:1144.
(5) COVID-19 relapse associated with SARS-CoV-2 evasion from CD4+ T-cell recognition in an agammaglobulinemia patient. Morita R, et al., iScience. (2023) 26:106685.
(6) Molecular Characterization of Dengue Virus Strains from the 2019-2020 Epidemic in Hanoi, Vietnam. Phadungsombat J,et al., Microorganisms. (2023) 11:1267.
(7) SARS-CoV-2 Related Antibody-Dependent Enhancement Phenomena In Vitro and In Vivo. Nakayama EE, et al., Microorganisms.(2023) 11:1015
(8) Anti-nucleocapsid antibodies enhance the production of IL-6 induced by SARS-CoV-2 N protein. Nakayama EE, et al., Sci Rep. (2022) 12:8108.
(9) Spread of a Novel Indian Ocean Lineage Carrying E1‐K211E/E2‐V264A of Chikungunya Virus East/Central/South African Genotype across the Indian Subcontinent, Southeast Asia, and Eastern Africa. Phadungsombat, J.et al., Microorganisms (2022) 10:354.
(10) Genetic Analysis of Influenza A/H1N1pdm Strains Isolated in Bangladesh in Early 2020. Hasan A, et al., Trop Med Infect Dis. (2022) 7:38.