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主要な研究成果Research Highlights




ロタウイルスの人工合成法の開発 (Kanai et al., 2017, PNAS, 114:2349-2354)

 
NHKニュース、TBSラジオ、朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、産経新聞、共同通信、Yahooニュース等、その他、国内外の多数のメディアに紹介されました。 RNAウイルスのリバースジェネティクス法は、プラスミドにクローン化したウイルスゲノム由来のcDNAなどを培養細胞に導入することで感染性の組換えウイルスを人工的に合成する技術です。この技術により、ウイルス遺伝子を任意に改変することが可能となり、ウイルス学研究の発展に大きく寄与してきました。ロタウイルスは乳幼児に下痢や嘔吐を引き起こすウイルスで、医療の発展が遅れている開発途上国では、ロタウイルス感染によって死亡する乳幼児が多く存在しています。ロタウイルスについては、これまで実用性の高いリバースジェネティクス法が確立されていなかったため、病原性解析や新規ワクチン開発の大きな障壁となっていました。

私達は、ロタウイルスの11分節のRNAゲノムを発現するプラスミドに加えて、組換えウイルスの人工合成を促進する因子として、細胞融合性タンパク質FAST(*1)とワクシニアウイルス由来のRNAキャッピング酵素(*2)を利用し、人工的に組換えロタウイルスを作製することに成功しました。さらに、この技術を応用し、抗インターフェロン作用を示すNSP1タンパク質に変異を加えることで増殖能が低下したロタウイルスや、ルシフェラーゼを発現するレポーターロタウイルスの作製に成功しました。

本研究成果により、ロタウイルス遺伝子の任意の改変が可能となり、ウイルス増殖機構の解明や、新規ロタウイルスワクチンの開発研究が飛躍的に進展することが期待されます。現行のロタウイルスワクチンとしては弱毒化した生ワクチンが世界的に利用されており、ロタウイルスによる乳幼児の死亡率低下に貢献しています。一方で、より安全で予防効果を向上させた新規ワクチンの開発も望まれています。これまでにない、ロタウイルスのリバースジェネティクス法の開発・技術により、任意の改変を加えることで人工的に病原性を制御したロタウイルスや、異なる国・地域で流行しているロタウイルス株に対して、より抗原性が適応したワクチン候補株を迅速に開発することが可能と考えられます。

(*1)FAST(Fusion Associated Small Transmembrane)タンパク レオウイルス科の一部のグループが持つ細胞融合性タンパク質。ロタウイルスもレオウイルス科に含まれる。ロタウイルス感染時にFASTを同時に発現することで、ロタウイルスの増殖が飛躍的に促進される。

(*2)RNAキャッピング酵素 ワクシニアウイルス由来のD1R, D12Lサブユニットから構成されるRNAキャッピング酵素により、細胞質内でロタウイルスRNAの5’末端にキャップ構造が付加されることで、RNAからタンパク質の翻訳効率が上昇する。

ネルソンベイレオウイルスの遺伝子操作系の確立
(Kawagishi et al., 2016, PLoS Pathogens, 12:e1005455)




ネルソンベイオルソレオウイルス(NBV)は1968年に初めてコウモリから分離されて以来、長らく非病原性のウイルスであると見なされてきました。 しかし、2000年代に入り、東南アジアを中心に重篤な呼吸器症状を呈した患者からNBVが相次いで分離されたことから、現在では新興の人獣共通感染症と考えられております。 これまでNBVの複製機構、病原性発現機構については解明が進んでおりませんでした。

本研究で私達は、遺伝子組換えNBVを人工的に作製することができるリバースジェネティクス(RG)系の確立に初めて成功しました。 RG系を用いてウイルス粒子表面に存在するσCの欠損ウイルス(σC-null)を作製し、解析した結果、σCはA549細胞のような一部の細胞株への感染には重要ですが、 L929細胞を含む多くの細胞株への感染には必要ではないことが明らかとなりました。 これらの結果は、NBVの感染にはσCに依存する経路と他のウイルスタンパク質(σB、μB等)によって介される経路が存在している可能性を示唆しています。 これまで、σCのみが細胞への吸着・侵入過程に関与していると考えられてきたことから、本研究の成果はレオウイルス科の感染機構を理解する上で重要な知見であると考えられます。 さらに、マウス感染モデルを用いてσCのin vivoにおける意義を調べたところ、in vitro(培養細胞)では必ずしも感染に必要ではないσCがin vivoではNBVの病原性発現に深く関与していることを明らかにしました。

これらの成果から、in vivoでのσC依存的な感染経路の重要性が明らかになるとともに、σCおよびσCに対する感染受容体を標的とした阻害薬の開発が感染制御において有効な戦略になるものと考えられます。





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