From Professor

 1999年末における全世界のHIV感染者総数は3430万人、これまでエイズでお亡くなりになった方は1880万人、1999年に新たにHIVに感染した方は540万人と推定されています。1999年の全世界の死亡原因を見ると、虚血性心疾患、脳血管疾患、急性下部呼吸器感染症についで、エイズは第4位にランクされます。現在、アフリカが最も激しい流行地ですが、近年、東アジアでもエイズ感染爆発の危険が指摘されています。

 私たちウイルス感染制御分野では、エイズなどのウイルス感染症の病原性発現の分子機構の解明を目標としています。比較的単純な病原体であるウイルスが人体という複雑なシステム中の様々な因子と相互作用をおこない、そのシステムを撹乱させた結果生じるのがエイズなどのウイルス感染症です。私たちは、ウイルス感染症に関わる病原体側ならびに宿主側の数多い因子とそれらの間の相互作用の素過程をまず分子生物学的手法を用いてひとつひとつ解明し、次いでそれぞれの素過程が疾患という高次な生命現象に実際にどのように貢献するのかを疫学的手法も取り入れて明らかにし、最終的に疾患の予防、診断、治療に役立てたいと考えております。

分野長 教授 塩田達雄