マイコバクテリアプロジェクト

マイコバクテリアについて:マイコバクテリア属には、結核菌をはじめとする様々な病原性細菌が含まれている。中でも結核菌による被害は甚大で、現在世界人口の約3分の1に当たる20億人が感染し、年間約200万人が結核で死亡しているといわれる。薬剤開発が急務とされているが、結核菌の基礎的な生物学については、意外とわかっていないことが多い。我々が特に注目しているのは、PIMとLAMと呼ばれる、ホスファチジルイノシトールを脂質部分として持つ糖脂質である。

生合成経路と制御のメカニズム:PIMとLAMの生合成経路は、図に示すように途中までは共通であるが、AcPIM4と呼ばれる中間体を境にして分岐する。生合成に関与する酵素は最初のいくつかについてはわかっているものの、後半部、特に分岐後のそれぞれの経路に関与する酵素についてはほとんどわかっていない。関与する酵素の同定を目指していると同時に、このような分岐する生合成経路がどのように制御されているのかについて研究中である。

薬剤開発への応用:PIMとLAMは結核菌が宿主に感染するときに重要な役割を果たすことが知られている。特にLAMについては、近年その免疫抑制作用が注目されている。したがって、PIMやLAMの生合成経路は薬剤開発の有力なターゲットであると考えることができる。我々の研究室では、PIMやLAMの生合成に関与する酵素を用いた薬剤ライブラリーのスクリーニング法を開発中である。

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