GPIアンカー型タンパク質の輸送経路

GPIアンカー型タンパク質は小胞体でタンパク質とGPIアンカーが結合することにより生合成される。GPIアンカーの生合成及びタンパク質への結合に関与するのはPIG遺伝子群である(研究内容1参照)。その後、ゴルジ体を経て細胞表面に輸送され、ラフトに濃縮される。PGAP (Post GPI-Attachment to Proteins) 遺伝子群がこの過程に関与する。現在、遺伝子同定されているPGAP1は小胞体に存在し、GPIアンカーのリモデリングに関与している。

GPIアンカー型タンパク質の輸送経路・リモデリング機構の研究

GPIアンカー型タンパク質はラフトと呼ばれる細胞膜のマイクロドメインに輸送・濃縮されることが知られている。ラフトは細胞表面において特有のシグナル伝達の場として、また固有のタンパク質輸送の場としてとして近年注目されている。また極性を有する上皮細胞においてはアピカル側に輸送される。このようにGPIによる修飾はタンパク質の局在・ソーティングシグナルとして働いているようである。このプロジェクトでは、小胞体で合成された後GPIアンカー型タンパク質のソーティング・局在過程に影響を及ぼすタンパク質群(我々はPGAP; Post GPI-Attachment to Proteinsと命名している)を同定し機能解析を行う。同時に、このことはラフトの動態・機能解析に非常に有用であると考えられる。

現在この過程において数多くの疑問が存在する。例えば、

? どのように、GPIアンカー型タンパク質はラフトに濃縮されるのか?
? 出芽酵母において小胞体からのGPIアンカー型タンパク質の輸送は他の非GPIアンカー型タンパク質と
 異なった小胞が使われるという報告があるが哺乳類細胞でも同様のことが起きているのか?
? GPIアンカー型タンパク質はゴルジ体においてラフトに組み込まれるとされているが、ラフト特異的輸送
 小胞は存在するのか?
? GPIアンカー型タンパク質特異的エンドサイトーシスの経路は存在するのか? 等である。

これらの疑問に答えるために、現在、GPIアンカー型タンパク質の細胞膜への輸送を経時的・定量的にモニタリングする新しいシステムとRNAiライブラリーの組み合わせによりPGAP遺伝子群を網羅的に同定しようと試みている。
既に発表済みのPGAP1タンパク質はGPIアンカー型タンパク質のリモデリングに関与していることが判明した。リモデリングとはGPIアンカー部分が輸送過程で変化することである。変異株の解析により、このリモデリングはGPIアンカーの物理特性を変えGPIアンカー型タンパク質の輸送に影響することが示された。今後他の生物種に関してもGPIアンカー型タンパク質の輸送経路・リモデリング機構の仕組みやその意義を研究する。これらの研究が何故多くのタンパク質がGPIアンカーで修飾されるのか、その意義を明らかにしてくれると期待している。現在計画・進行中のプロジェクトに対して人手不足である。興味のある人は是非参加してほしい。

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