最終講義「生殖細胞の研究」

2004年3月19日3時〜 微生物病研究所 大講堂

西宗 義武 教授

 私たちの体は数十兆の細胞からできています。これは一個の受精卵を、複雑な発生過程を間違えることなく、ゲノムに書かれている遺伝情報に従って、様々な機能を持つ細胞へと分化させた結果として捉えることができます。すなわち、多細胞生物の個体は総称して体細胞と呼ばれ個体の形成・維持を行い個体の寿命とともに消滅する細胞と、これとは全く目的を異にする生殖細胞から成り立っているのです。生殖細胞そのものは、体の形成にも維持にも関与しませんが、遺伝情報を生命の続く限り世代を越えて継承するためにあるといえます。この様に個体のほぼ全てを形成する体細胞と次世代を作り出すためにのみ特化した生殖細胞は目的が異なるため、それぞれ固有の生物学的法則が存在するはずです。生命の営みを支える多くの法則は体細胞の研究から得られてきたものですが、私は生殖細胞研究によって、これまで理解されていなかった新たな生物学的法則が明らかになると考え、とくに哺乳類雄性生殖細胞系に注目しました。(1/5)

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