本研究分野では、感染症の病態解析を細菌性（具体的には、病原性大腸菌、ビブリオ属菌、エロモナス属菌）腸管感染症をモデルに、1）細菌の腸管内定着現象、2）細菌性蛋白毒素、3）�祁進�泌装置とそのエフェクター分子の解析の3つの側面から行い、感染・発症にかかわる細菌側および生体側の諸因子を明らかにし、これらを総合的に理解し、理にかなった治療法および予防法の確立をめざしている。
具体的な研究テーマ
- 種々の腸管病原菌の定着現象に関する研究
定着に関与する細菌側の因子とそれに対応する生体側の因子(レセプターなど)の解析。 - 種々の腸管病原菌の毒素に関する分子生物学的解析
毒素遺伝子の分子遺伝学的解析を行うとともに、毒素の作用機序を分子生化学・生物学的に解析する。これらの情報は感染症の治療と予防（ワクチンなど）に役立つ新規な（定着因子や毒素を利用した）薬剤の開発などに有用なものとなろう。 - III型分泌装置とエフェクター分子の解析
多くの腸管病原菌はIII型分泌装置を用いてエフェクター分子を標的細胞に直接注入していることが明らかになってきている。III型分泌装置の構造と機能の解析を行うとともにエフェクター分子を同定しその作用機序を追及することで病態解析を行う。 - 各種病原菌の簡易迅速同定法の開発
免疫学的手法や分子遺伝学的手法を用いて、各種病原因子をターゲットとした簡易迅速同定法の開発を行っている。 - 院内感染解析、タイ国でのRCC-ERI拠点での感染症の疫学的研究にも取り組んでいる。
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図3 ： エロモナスのTTSSとAexUエフェクターの作用メカニズム
エロモナスのAexUは、エロモナスのTTSSでトランスロケーションされる（1）とともに細胞外にも分泌される（2）。このAexUは、RGDモチーフを持ち（3）α6β4インテグリンレセプターを認識し、Rac1を活性化する（4）結果、細胞膜Ruffleや Macropinocytosis（5）を引き起こし、Rab8依存的に（6）ERを中心に核周辺に移動する（7）。Calnexinのシャペロン作用を受けた一部のAexUは細胞の分泌系（8）へ向かい、活性型Rael（9）により、細胞骨格異常をきたし、細胞からAexUが遊離（10）し、近くの細胞を再びattackする。もし分裂中の細胞に作用するとTubulinの障害のため二分裂が完了せず、分裂が停止する。