感染症国際研究センター

感染症学・免疫学融合研究グループ

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研究グループ

特任講師(常勤)久堀 智子

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研究内容

 病原菌が病気を引き起こすためには、細菌から宿主細胞へ注入される病原因子群と、そのための輸送システムが中心的な役割を果たします。私達はヒトに肺炎を引き起こすレジオネラという病原菌をモデルとして、輸送システムであるIV型分泌装置(T4SS)と、病原因子であるエフェクタータンパク質の働きを分子・原子レベルで明らかにしようとしています。
図1

図1 DotDは多様な細菌分泌系に保存される構造モチーフを持つ、T4SS外膜コアタンパク質である

(1) IV型分泌装置の構造と機能
 レジオネラはIV型分泌装置を利用して、レジオネラ全タンパク質の一割弱という膨大な数のエフェクタータンパク質を宿主細胞質中へ輸送しています。病原性大腸菌やサルモネラなどが持つIII型分泌装置とは異なり、IV型分泌装置の実体や分泌メカニズムはほとんど明らかにされていません。我々はIV型分泌の分子機構の解明を目指して、分泌装置の機能・構造解析を通じてその実体に迫りたいと考えています。
図2

図2 エフェクターを制御するエフェクターLubX

(2) エフェクターの機能とその制御
 エフェクタータンパク質の機能を知ることは、細菌による病原性の分子基盤を理解するために必須です。私達は他に先駆けてレジオネラでは最初のエフェクターRalFを同定した他、最近ではE3ユビキチンリガーゼとしての機能を持つLubXが、実は別のエフェクターの負の時間的制御を司る、これまでに例をみないタイプのエフェクタータンパク質、メタエフェクターであることをつきとめています。

(3) レジオネラと自然宿主である自由生活性アメーバ
  レジオネラの特徴のひとつは、自然宿主アメーバとの相互作用の歴史のなかで、ヒトに対する病原性を獲得してきたことにあります。 このような病原菌誕生のメカニズムを明らかにするため、レジオネラと自然宿主の相互作用の解析を進めています。


最近の代表的な論文

  1. Hubber A, Kubori T, *Nagai H. Modulation of the ubiquitination machinery by Legionella. Curr Top Microbiol Immunol. 2014:376, 227-247
  2. Hori JI, Pereira MS, Roy CR, *Nagai H, Zamboni DS. Identification and functional characterization of K(+) transporters encoded by Legionella pneumophila kup genes. Cell Microbiol. 2013: 15, 2006-2019
  3. Nagai H and Kubori T. Dot/Icm type IVB secretion systems of Legionella and other gram-negative bacteria. Front Microbiol. 2011: 2,136.
  4. Kubori T, Shinzawa N, Kanuka H, Nagai H. Legionella metaeffector exploits host proteasome to temporally regulate cognate effector. PLoS Pathog. 2010;6(12),e1001216.
  5. Nakano N, Kubori T, Kinoshita M, Imada K, Nagai H. Crystal structure of Legionella DotD: insights into the relationship between type IVB and type II/III secretion systems. PLoS Pathog. 2010;6(10),e1001129.

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