病原菌が病気を引き起こすためには、細菌から宿主細胞へ「配達」される病原因子群と、そのための輸送システムが中心的な役割を果たします。私達はヒトに肺炎を引き起こすレジオネラという病原菌をモデルとして、輸送システムであるIV型分泌装置と、病原因子であるエフェクタータンパク質の働きを分子・原子レベルで明らかにしようとしています。
(1) IV型分泌装置の構造と機能
レジオネラはIV型分泌装置を利用して、レジオネラ全タンパク質の一割弱という膨大な数のエフェクタータンパク質をエフェクター分子を宿主細胞質中へ輸送しています。病原性大腸菌やサルモネラなどが持つIII型分泌装置とは異なり、IV型分泌装置の実体や分泌メカニズムはほとんど明らかにされていません。我々はIV型分泌の分子機構の解明を目指して、分泌装置の機能・構造解析を通じてその実体に迫りたいと考えています。
(2) エフェクターの機能とその制御
これまでに知られているエフェクタータンパク質のなかには、同じ宿主タンパク質をターゲットとするものの、正反対の機能を持つようなものもあります。従って、エフェクターの宿主細胞内での機能は、絶妙な時間的・空間的制御を受けていると考えられます。私達は他に先駆けてレジオネラでは最初のエフェクターRalFを同定した他、最近ではE3ユビキチンリガーゼとしての機能を持つLubXが、実は別のエフェクターの負の時間的制御を司る、これまでに例をみないタイプのエフェクターであることをつきとめています。
図1 : 細菌両極に局在するIV型分泌装置(緑) |
図2 : エフェクターを制御するエフェクターLubX |