Proc. Natl. Acad. Sci. U S A 112(33):E4581-90 2015/08/18

インターフェロン ガンマ(IFN-γ)は様々な細胞内寄生性病原体に対する細胞自律的感染防御機構に重要である。特に、IFN-γ誘導性GTPaseである IRGとGBPは病原体含有膜構造体(PCV)に動員され、それを破壊することによって細胞自律的に病原体排除をしている。IRGやGBPのPCVへ動員が促進される機構については徐々に分かってきたものの、その抑制機構についてはほとんど分かっていなかった。今回、我々は、元々Rab small GTPaseの阻害物質として発見されていたRabGDIαと呼ばれるタンパク質がIFN-γ誘導性GTPaseの負の制御因子であり、細胞内寄生性病原体であるトキソプラズマ原虫に対する細胞自律的免疫系を抑制することを報告する。まずRabGDIαの過剰発現によりIFN-γ依存的なトキソプラズマ原虫数の減少が起こりにくくなっていた。逆にマクロファージや線維芽細胞においてRabGDIαを欠損させると、IFN-γ刺激によるトキソプラズマ原虫の排除が促進した。 またRabGDIα欠損マウスは高力価のトキソプラズマ原虫感染に対して抵抗性であり、特に脳における原虫数の低下が見られた。次にIRGとGBPのなかで、Irga6とGbp2のトキソプラズマ原虫のPCVである寄生胞への動員率がRabGDIα欠損細胞で上がっていた。さらに興味深いことにGbp2はIrga6のト キソプラズマ原虫寄生胞への動員を促進しており、Gbp2のIrga6動員促進効果がRabGDIαの脂質結合ポケットを介したGbp2への直接的結合により阻害されていることが分かった。以上のことから、RabGDIαはIFN-γに依存した細胞自律的免疫系の中でGbp2-Irga6軸を抑制して、トキソプラズマ原虫に対する感染防御をブロックしていることが示唆された。