松浦善治教授に聞く(3)「微生物病研究所と新型コロナウイルス」分子ウイルス分野

Q1 新型コロナウイルスに対する、微生物病研究所の対応を教えてください。

大阪大学微生物病研究所で新型コロナウイルスの研究やワクチン開発に取り組む松浦善治教授分子ウイルス分野)のインタビューの3回目は、微研の対応についてです。(聞き手、サイエンスライター・根本毅)(2020.9.8 インタビュー)

全3回: 第1回 第2回

Q2 ──微研は新型コロナにどのような対応をしたのですか?

今年2月ごろから、研究所を挙げて新型コロナ研究に取り組んでいます。約30ある研究室のほとんどが何らかの関与をしています。私は肝炎ウイルスが専門ですが、今は新型コロナの研究しかしていません。

 

新型コロナが出現し、「これからもっといろいろな感染症が出てくる。新興の感染症に対応する組織を作ろう」と、微研とBIKEN財団、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所の3機関が早い段階から一緒に研究を始めました。今は阪大の免疫学フロンティア研究センターや医学部、薬学部、工学部、産業科学研究所なども加わり、大学全体で取り組んでいます。

Q3 ──今後、新興新型感染症に備えるために、何をしなくてはいけないのでしょう。

もっと毒性が高く、人が多く死ぬ感染症が日本に入ってくる可能性もあります。そのために、エボラウイルスなど最も危険な病原体を研究できるBSL(バイオ・セーフティー・レベル)4の研究施設を作らないといけません。今は東京に1カ所あり、長崎大で国内2カ所目が建設されています。それだけでは足らず、北海道や関西にも作るべきです。また、PCR検査の機器も必要です。

 

また、もっと根本的な対策が大事ではないでしょうか。今は感染症が出ると、診断薬を作って薬を探し、ワクチンを作るという個別対応です。同じことを昔からやっていて、進歩がありません。だから、例えば呼吸器とか神経とか、どこに症状が出るかなどでざっくり枠を作り、試みる薬や予防法をあらかじめセットで用意しておく。「こういう感じの感染症だったら、このように対応する」と決めておけないでしょうか。今回のパンデミックを機に、考え直さないといけないと思います。

Q4 ──感染症全般にマスク着用や学校休校、ソーシャルディスタンシングなどの対策が効果はあったのでしょうか?

──国立感染症研究所によると、今年は新型コロナ以外の多くの感染症で過去より患者数が抑えられています。

 

そうですね。リモートワークが増え、通勤が減ったのも大きいでしょう。東京や大阪の通勤ラッシュは感染症対策という観点でも良いわけがない。

 

──働き方という視点だけでなく、感染症対策としても通勤や東京一極集中は考え直した方がいいのですね。

 

そういう意味で、今回の新型コロナは社会に変化をもたらしました。ただ、極度に感染症をなくした清潔社会になると、弊害も考えられます。人の体は腸管内や体表、口内などに100兆個もの微生物がいます。私たちはいろいろな微生物に守られているという認識を持った方がいいです。

Q5 ──最後に。あらゆるメディアに新型コロナの情報があふれていますが、どう感じていますか。

ちょっとあおっている感じがしますね。特にワイドショー。お年寄りや主婦は朝からずっとワイドショーを見ています。うちの家内も影響されて「(新型コロナは)大丈夫なの?」と聞いてくるので、「大丈夫だよ」と答えています。

 

──正しい情報の発信が必要ですね。

 

研究者がもっと発信しないといけないのですが、本当に研究している人はなかなか余裕がない。難しいですが、微研は今後も正確な情報の発信に努めていきます。

=おわり