大阪大学21世紀COEプログラム 感染症学・免疫学融合プログラム
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大阪大学
RIMD 微生物研究所
研究課題:毒素性細菌感染症の分子機構解析

■杉本 央プロフィール
昭和51年3月 大阪大学医学部 卒業
昭和55年10月 大阪大学微生物病研究所 抗酸菌生理学部門 助手
昭和62年4月 大阪大学微生物病研究所 抗酸菌生理学部門 助教授
平成11年4月 大阪大学大学院医学系研究科 感染因子防御学分野  教授
平成13年4月 大阪大学大学院医学系研究科 機能分子制御分野 教授
現在に至る
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■研究分担者

伊勢川裕二(大阪大学大学院医学系研究科助教授 機能分子制御)
戸邉 亨(大阪大学大学院医学系研究科助教授 機能分子制御)

安倍裕順(COE特任助手)

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■研究概要
杉本はこれまで嫌気性有芽胞菌クロストリディウム属細菌が産生する蛋白質毒素の作用機構と感染症症状との関連についての研究を行なってきた。
破傷風毒素については、破傷風毒素を多量に静注するとボツリヌス中毒症と類似の弛緩性麻痺を動物に惹き起こすことを見出した。そこで、マウス横隔神経−横隔膜標本を用いて破傷風毒素の神経筋伝達遮断作用を詳細に検討した。その結果、破傷風毒素の用量作用曲線の勾配はB型ボツリヌス毒素のそれと極めて類似しているが、A型ボツリヌス毒素とは異なることが明らかになった。これらの結果から、破傷風毒素の作用標的はB型ボツリヌス毒素のそれと同じであるが、A型ボツリヌス毒素の作用標的とは異なることが解った。
ウエルシュ菌エンテロトキシンについては、その細胞毒作用機構がカルシウムの細胞内流入であること、毒素分子自体にイオンチャンネル形成機能があることを明らかにした。さらに、本毒素の受容体蛋白質をクローニングして遺伝子構造を明らかにするとともに、腸管上皮細胞および肝細胞に毒素受容体が発現されていることを明らかにした。
チオール活性化溶血素の心臓毒作用は心筋に対する直接作用でないことを明らかにした。心臓以外の実質臓器においても溶血素が血管抵抗を著しく上昇させることから、血管系に対する毒素作用の解析を行なった。その結果、内皮細胞依存性の血管弛緩が溶血素によって特異的に阻害されることを見出し、内皮細胞機能障害による冠動脈血管収縮がチオール活性化溶血素の心臓毒作用の本体であることが明らかになった。
Clostridium septicumは極めて致命率の高いガス壊疽を惹き起こす細菌である。同菌が産生するα毒素を静注したときの死因が心原性ショックであることを明らかにした。さらに本毒素は心筋に直接作用して、その収縮性に著しい傷害を与えることを見出した。α毒素の濃度を下げると、心房筋の自律性収縮は傷害されるが直接の電気刺激によって誘発される心筋収縮は保存されることから、本毒素の標的組織が心臓の特殊伝導系であることを示した。
現在、上記毒素作用と感染症症状との関係を更に詳細に検討するとともに、ブドウ球菌エンテロトキシンによる嘔吐誘発機構やジフテリア毒素による特異な心不全の発症機構の解明に着手している。

クロスロリディウム属細菌(Clostridiua)は様々な蛋白質毒素を産生する。破傷風菌やボツリヌス菌が産生する神経毒素は、神経終末部(Nerve terminal)においてSNAREと呼ばれるシナプス小胞膜とシナプス前膜の融合蛋白質を限定分解することによって神経伝達を阻害し運動神経障害をもたらす。ウエルシュ菌(C. perfringens)エンテロトキシンは、腸管上皮細胞にカルシウムイオンの流入を惹き起こすことで上皮細胞を傷害し、食中毒を起こす。また、同様のメカニズムで肝細胞を破壊し、動物を殺す。チオール活性化溶血素(SH-activated hemolysin)は、血管の内皮細胞(Endotherium)に作用して内皮細胞依存性血管弛緩因子(EDRF)の放出を阻害する。そのため様々な臓器では血管収縮による血流障害による機能不全が生じる。セプチカム菌(C. septicum)が産生するα毒素は心臓に直接作用し、特殊伝導系の傷害によって心臓の自律収縮活動が停止する。
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■本研究にかかわる業績
1. Abrami, L., M. Fivaz, P. E. Glauser, N. Sugimoto, C. Zurzolo, and F. G. van der Goot.
2003. Sensitivity of polarized epithelial cells to the pore forming toxin aerolysin. Infection and Immunity. 71: 739-746.
2. Hong, Y., K. Ohishi, N. Inoue, J-Y, Kang, H. Shime, Y. Horiguchi, F. G. van der Goot,
N. Sugimoto, and T. Kinoshita. 2002. Requirement of N-glycan on GPI-anchored proteins for efficient binding of aerolysin but not Clostridium septicum ?-toxin. The EMBO Journal. 21: 5047-5056.
3. Sugimoto, N., and M. Matsuda. 2002. Motor neurons. In Site-specific neurotoxicity.
D. S. Lester, J. N. Johannessen, W. R. Slikker and P.Lazarovici, editors. Taylor & Francis Inc. pp 167-179.
4. Saito, T., I, Miyai, T. Matsumura, S. Nozaki, J. Kang, H. Fujita, N. Sugimoto, and N.
Yuki. 2000. A case of Bickerstaff's brainstem encepharitis mimicking tetanus. Journal of Neurology, Neurosurgery and Psychiatory, 69, No5: 695-696.
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